愛しきことば 第9回 人生の道

カリグラフィーアーティスト  松田 圭子

9月号の表紙はフランスの中南部ロカマドゥールの家並みで、山深い辺ぴな所にある中世からの巡礼地です。険しい断崖の上に教会があり、その山上からの眺めで狭い坂道をはさんで家々が連なっています。最近私はこういう道を見ると、人の一生がこの道だとすると今の自分はどのあたりを歩んでいるのだろうかと思うことがあります。人生85歳までとして、残りの人生はあと27年程という感覚が不思議なくらいないのです。計算するほどのこともなく分かりそうなものですが、考えたこともありませんでした。それが今年の1月頃にあることをきっかけに気づかされたのです。その出来事とは…

私は程々に犬好きで、今振り返ると生活の中にいつも犬が一緒にいた気がします。今年1月にも17歳のダックスフンドがいました。(4月27日に星になりました)この子と一緒に飼ったもう一匹が先に逝ってしまったので、再びもう一匹迎えたいと思っていました。その際は保護犬をと。特別に保護犬をと思ったきっかけがあるわけでもなかったのですが、何かボランティア的なことに係わりたい思いはありました。そして思い経ったように保護犬のサイトを見るようになり、目に留まったのは千葉県の保護団体のものでした。そして実際に会うために譲渡会の会場へ出向きました。一応あるワンコに申し込みをしたのですが、こちらの年齢を理由に断りのメールが届きました。年齢のことは別のサイトでは夫婦両方が65歳以上の場合、娘、息子等の後見人が必要とあったのですが、この団体は何も基準が示されていなかったので、ストレートすぎる言葉にかなりショックでした。その後数回申し込みをしましたが、いずれも年齢を理由に却下でした。保護センターにいる子たちは、大体がMIXで血統書付きの子に比べて長生きをすることもあって飼う人の年齢は重要なようです。ここから考えてみると私の58歳に15~16年を加え、犬の年齢を引くと70歳半ばとなります。「ああ。犬一匹の一生も付き合うことが難しい年齢になったんだな」と。

これから先の人生、大切に生きなければと感じたよい機会だったと思います。

PS その後保護犬、迎えることができました!