書評Books 愚かでも独善でもない、 誠実な生き方をするための助け

『「バカな平和主義者」と独りよがりな正義の味方』
鈴木 光 著
B6判 1,400円+税
いのちのことば社

保守バプテスト同盟 ニューライフキリスト教会 牧師 大沼 孝
本書が「平和と戦争」に対するクリスチャンの理解の仕方をわかりやすく解き明かしていることに、深い尊敬と感謝の思いを表したいと願います。
「深い尊敬」というのは、著者がまだ三十歳代半ばの「若者」世代に属しているからです。若い人から、このような内容の本が出てくることに、私は希望の光を見るように感じます。
「感謝の思い」というのは、本書が、私自身の考えのあいまいな部分に気づかせてくれ、考えを整理する上で大変助けになるからです。私は、自分に関する限りは、著者が言うところの「平和主義」の立場に立ちたいと願っています。「平和主義」とは、理不尽な暴力に対しても抵抗せず、敵を愛することに徹することです。
けれども、私はあらゆる場面で、その立場を貫き通すことはできないだろうと思います。例えば、もし私の子どもが誰かから理不尽な暴力にさらされたら、間違いなく私は戦うでしょう。つまり、ある場合には、著者が言う「正義の戦争主義」に立つと思うのです。しかも、日常生活における私の振る舞いを観察するなら、敵味方をはっきり分ける「聖戦主義」的な心情に傾きがちであることは明白です。本書は、私自身の生き方のあいまいさと矛盾に気づかせてくれるのです。
著者は、キリスト教信仰とは「考え方ではなく生き方」だと言います。本書は、読者に特定の考え方を強いるのではなく、自分の生き方を自分自身で考えるための材料を丁寧に提供しています。本書は、愚かでも独善でもない、誠実な生き方をしたいと願う者の助けとなることでしょう。とりわけ若い世代の方々に本書を読んでいただきたいものです。若い世代の方々が、「平和と戦争」という大きな問題をも考える力を備えてこそ、私たちの社会に希望が持てると思うからです。ですから、私は本書を買って、自分の教会の若者にプレゼントするつもりです。