CD Review ◆ CD評 『Nobody Knows … わが悩み知りたもう』

『Nobody Knows … わが悩み知りたもう』
高田 篤美
ブリッジス・フォー・ピース・ジャパン 局長

マリアが出会った人……

 マリアがイエスをみごもったのは、十三歳頃だったと言われる。今で言うなら、中学一年生ということになる。現代とはまったく違う中東文化の中、死罪にされてもおかしくない婚姻外の妊娠をしたマリアを誰が祝福したであろう。まして、誰も彼女が神の子どもを宿していることなど、知るよしもなかったのだから。思春期の自分の感情さえコントロールできないこの時期、このような大任を一人で果たさなければならなかったマリアを、励まし、支え続けたのは誰だったのか。

  国分友里惠さんの『Nobody Knows…』を聴きながら、その回答を得たような気がした。それは、「恵まれた人、マリア。おめでとう、マリア」と言い続けた天使たちの声ではなかったか。彼女の歌声は、まさにそのときマリアが聞いたであろう天使の声そのものであった。しかも、天使たちは、天上からマリアを見下ろして「おめでとう」を言ったのではなかった。彼女の目をしっかりとみながら、祝福を語り続けたことが、一曲目のアヴェ・マリアから熱く伝わってきた。

 このアルバムには、私たちの魂に染み込んでいる賛美歌の数々が収録されている。その永遠のメロディーに、国分友里惠ならではの、メッセージと愛情が込められた歌詞がそえられている。原詞の意味をよく捉えながら現代訳をしているので、古さと新しさが味わい深く共存し、そのどれもが静かにゆっくりと心に落ちてくる。彼女のCDすべてに共通する「いやし」が、このアルバムにも目いっぱい詰まっている。そして、歌唱力が絶対条件である賛美歌を歌い上げる彼女の音楽性の豊かさに驚かされる。

 夫である岩本正樹さんの重厚な映画音楽のようなアレンジは、賛美歌が持つ歴史を少しも損なうことがない。それどころか、畏敬の念と崇高さを感じさせる。コーヒーを片手に、静かに目を閉じて、じっくりと耳を傾けると、心地よい聖書の世界が広がってくる。皆様にも、夫妻の新しい自慢の子ども(アルバム)に、ぜひ出会っていただきたい……と、心から思う。