CD Review ◆ CD評 『琴音(ことね)』

CD「琴音(ことね)」
西村あきこ
ゴスペルシンガー

ありのままの等身大で

 まず第一印象、この「琴音」というタイトルと、ジャケットから、日本的な雰囲気、日本人の心に通じる癒し、懐かしさ、というのを感じました。しかも二枚組のCDそれぞれのタイトルが、「祈りうた」|黒人霊歌や日本の賛美歌などを歌った曲、と「日々のうた」|塩谷さんのオリジナルの曲、とネーミングもかわいいですね。

 「祈りうた」、こちらは私たちにも馴染みの深いアメージング・グレイスなど賛美歌が続きますが、そのすべてがもう、すぐそこで塩谷さんが歌っているのか?と思えるような、声もピアノも生音に近い、ライブ感あふれた音作りがされていて、息づかいまではっきり聞こえてきそうです。 装飾を一切省いて、シンプルだからこそひとつひとつが力強い楽器の音と、やさしく、しかし心にぐさっとくるストレートな歌声とのハーモニーは、知らずに目をつむって聞き入ってしまう、生の音のもつ温かさに心癒される、そんな作品だと思います。

 がらっと雰囲気が変わるのが「日々のうた」、心地いいリズムと、これまたアコースティックな楽器たち(猫の声も!)が、楽しそうに、仲良さそうに演奏している、そんな雰囲気にあふれ、また違った塩谷さんの世界を聴かせてくれます。昼下がりにコーヒーでも飲んで、ほっと一息つく時に聴いてリラックスしたい!という感じです。

 音楽はどこにでもあふれかえり、知らず知らずに耳に入って来るのは、ほとんどが機械で作られた音や処理された声、そんなご時世ですが、でもやっぱりアコースティックにはかなわない、本来の生の音の持つ強さ、やさしさ、深さ、素晴らしさを思い起こしました。その中で、塩谷さん独特の温かな声で「この日々を全部を感謝したいんだ」というメッセージを聴くとストンと心に入ってくる……何も飾らず自然なありのままで、神様に作られた本来の形が一番素敵なんだと気づかせてくれたような気がします。