風色のカレンダー 2 幻のカレー

幻のカレー
相馬幸恵
ミニチュアクラフト

 「カレーライス、嫌いになりそうだよおー」。私がパートに出始め、少しでも家事を助けようと主人が重い腰を上げてくれました。手始めにカレーライスをと、いざ挑戦。小学生だった子どものかっこうの絵日記の材料になりながら悪戦苦闘の連続でした。以来、週に一度は「お父さんのカレー」の日。ところが、私が仕事で不在の日が続いたとき、やむを得ず主人がルーを変えて、クリームシチューやビーフシチューを作って急場をしのいだことがありました。さらに私の仕事が忙しくなると「お父さんのカレー」の出番も多くなり、とうとう冒頭の言葉が……。

 以前、20種類のハーブを使いじっくり時間をかけてカレーを作ったことがありました。辛さを調節しているうちに大量にできてしまいましたが、家族みんな喜んで食べてくれました。

 今はそんな余裕もなくなり、その幻のカレーもなかなか作ることができません。しかし、こころを込めて作った食事はどのようなものでも、私たち家族のこころを包んでくれる気がします。

 イエス様を裏切って、疲れたこころと体を引きずって漁から帰ってきたペテロを、イエス様が温かい朝ご飯を用意してお迎になったように……。