草ごよみ 5 ムラサキツメクサ

ムラサキツメクサ
上條滝子
イラストレーター

 薄紅色の小さな花がポンポン玉のように集まって咲く、かわいらしいこの花を河川敷の土手や原っぱで目にした人は多いと思う。

 ヨーロッパ原産で明治初年に初めて牧草や緑肥用に栽培され始め、その後野生化して広がり、今では東京都内でもお堀端や四谷の土手に群生する所もあるほど、日当たりの良い草地の身近な草だ。

 でも私は子どもの頃原っぱでさんざん草遊びをしたけれど、これを見た記憶はない。原っぱにはタンポポやシロツメクサが子どもを夢中にさせるほど咲いていた。シロツメクサ(だれもみなクローバーと呼んでいたけれど)をいっぱい摘んで長い花輪を編んだり、四つ葉探しをしたり……。あの独特の香りごと懐かしく思い出す。

 ムラサキツメクサは、はじめオランダゲンゲとも呼ばれたが、そのうちシロツメクサの方が、小さな花の形が似ているから近いでしょうと、この名に落ち着いたそうだ。ヨーロッパではムラサキツメクサの方がだんぜん人気が高い。飼料に良し、鋤き込んで緑肥とし、香りの良い薬草酒を作り、昔は百日咳のシロップ薬にもし、また蜜蜂が好む良い蜜源となる。

 シロツメクサの方は、葉に青酸が含まれるので飼料に向かず、丈夫な茎が地面に広がり、がっちり根を張るので、一度牧草地に入ると除去に厄介と、イギリスでは嫌われ者だそうだ。いっぱい遊んで良い思い出を持つ身には少し寂しいけれど、シロツメクサも蜜がよく採れるので子どもばかりか、蜜蜂や養蜂家にも素晴らしい花畑になる。