注解書でもっと豊かに聖書を味わう。 注解書を使う恵みって何?

山口 昇
玉川神の教会主任牧師 アレセイヤ聖書研究所所長

 一般信徒の方々が聖書の注解書を使う上での具体的な使い方や、使うことのメリットについて考えてみたいと思います。

Ⅰ なぜ注解書を使うのか?

 使徒の働きには「ここのユダヤ人は、テサロニケにいる者たちよりも良い人たちで、非常に熱心にみことばを聞き、はたしてそのとおりかどうかと毎日聖書を調べた」(一七・一一)と書いてあります。ベレヤの信者はパウロの説教を聴くだけでなく、聖書(旧約)を調べたのです。このように、信仰者は説教を聴くだけでなく、聖書を調べることも大切です。そのときに役立つのが、聖書の注解書なのです。

 それだけでなく、聖書を自分で読んでいても、意味がよくわからない時に、調べるのに聖書辞典だけでなく、注解書が非常に役立ちます。注解書は、そのことばの意味だけでなく、その文脈においてどういう意味を持っているかを示してくれます。場合によっては、その節や章がどういう意味を持っているのかを教えてくれます。

 さらに、その書全体がどういう内容か、著者はだれか、著作年代はいつ頃か、その書の思想的・神学的特色は何か、といういろいろな問題についての説明があり、聖書研究会で発表を頼まれたときや、教会学校でのメッセージを頼まれた場合の準備にもとても役立つものです。場合によっては、その聖書箇所の霊的教訓を示しているものもあります。

Ⅱ どういう注解書が良いか

 注解書にもいろいろ種類があります。ここでは誌面が限られていますので、私が実際に執筆したり、編集にたずさわったりしたものに限って説明します。

■『新実用聖書注解』
 旧新六十六巻を取り扱っている一巻物の注解書です。値段も『新聖書注解』と比べると手頃です。ただし、注解の部分が、段落単位になっているところもあり、『新聖書注解』と比べると若干簡略になります。しかし、一巻物でありながら、総論や年表もついており、役立ちます。

 長く用いられてきた『実用聖書注解』を新改訳聖書第三版に対応するために改訂したのが本書で、内容的には変わりません。さらに、装丁をビニールの表紙にしたり、軽量化して、価格も大変手頃になりました。その点で初心者の方にお薦めです。

■『新聖書注解』
 これは旧約四巻、新約三巻からなる、本格的注解書です。聖書全巻について、原則として各節ごとに注解がなされています(著者によっては、数節まとめてとか、段落ごとに注解しているものもあります)。翻訳ではなく、すべて日本人が書き下ろしたもので、大変読みやすいと評判です。全七巻そろえると出費がかさむのが問題ですが、一度に全部そろえなくても、一冊ずつそろえていく方法もあります。

■『ティンデル聖書注解』
 これは英国で出版された、現代の英語圏における有数の学者たちによる全四十八巻からなる注解書です。邦訳は現在まだ刊行中ですが、どちらかというと、前掲の注解書より学問的にレべルの高いものもあります。価格的には全巻分売なので、一番高いものでも四千円台です。一般信徒の方でも、学問的な議論をしている注の部分を除いて、本文だけ読めば結構役立ちます。

  以上、大変簡単ですが、注解書を用いることによって得られるメリットと、各注解書の特徴を紹介しました。でも、本当のメリットは、読者の皆さんが根気良く使い込んでみて初めてわかるものです。とやかく言わずに、とにかく使ってみてください。