時代を見る目 226 改憲論と日本の行く末 [1]

鈴木伶子
平和を実現するキリスト者ネット事務局代表

ニューヨークにある国連ビルの庭には、「剣を打ちかえて鋤とする」というのイザヤ書のことばが刻まれた碑があります。
第二次世界大戦では、敗戦国だけではなく戦勝国もかけがえのないいのちを多数失いました。戦争が終わったとき、二度とこのような惨禍を起こしてはならない、紛争は武力ではなく話し合いで解決しようと「国際連合」が設立され、このことばを刻んだ碑が建てられたのだそうです。武器で争うことをやめ、大地の実りを分け合って生きていこうというこの聖句は、日本国憲法第9条の“紛争を解決する手段として戦争をしない、そのために戦力は持たない”という規定と響き合っています。
しかし今、この第9条を“自衛のために国防軍を持つ”という規定に変えようと、改憲論が活発です。与党は、次の参議院選挙で多数を占めたなら、まずは、国会議員の3分の2以上ではなく“半数”で憲法改定の発議ができるように第96条を変えようとしています。

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イザヤ書が書かれた時代も、ユダヤは近隣の国に脅かされ、人々は大国と同盟を結ぶことで、安全を確保しようとしていました。今、日本は領土問題と歴史認識で、近隣諸国との関係が極度に悪化しており、安部首相は、米国との同盟関係を頼みにしていますが、米国人の大半は、日本に米軍基地を置くのは米国の世界戦略のためであり、日本を守るためではないと考えています。米国政府は、日本も軍隊を持ち、必要な場合には米国と一緒に戦争をしてほしいと、改憲を促しています。
しかし広く世界を見渡すと、世界の流れは、軍事より経済協力という方向に向かっています。アメリカ自体、対日貿易より対中貿易の方がはるかに大きく、中国との共存の方向に進んでいます。このような時期に、第9条を変えて軍隊を持つことは、世界の潮流に反することです。むしろ第9条は、世界の目標にするに足りる貴重な指針です。この60余年、戦争侵略によって他国の人を殺さなかったことで、日本は高い評価を得ています。イエス・キリストも「剣を取る者は剣で滅びます」とおっしゃいました。剣を打ちかえて鋤とするというみことばの実現のために働くことが、このみことばを与えられた私たちキリスト者の責任です。

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「彼らはその剣を鋤に、その槍をかまに打ち直し、国は国に向かって剣を上げず、二度と戦いのことを習わない」
(イザヤ2・4)