時代を見る目 190 リーダーの要件<1>
テレヴィジョンではなくヴィジョンを見よう

泉田 昭
日本キングス・ガーデン連合 会長

   多くの人は、毎日平均3~5時間はテレヴィジョンを見ているという。私もソファーで居眠りをしながら、漫然と見ている。娯楽番組にはリラックスして興じ、ニュースを見て世界の出来事を知り、悲惨な事件に心を痛める。しかし、それだけで、それらによって深く考え、自分の生き方を変えることはない。

 学生時代、クリスチャンになった時、教えられた言葉がある。「ノー・バイブル、ノー・ブレックファスト(聖書を味わわないで、朝食は摂らない)」。毎朝4時に起き、聖書を味わいながらゆっくりと読み、静かに祈りながら神と交わる。
 イエスの教えに目を覚まし、パウロと論じながら考え、一日のスケジュールをつくる。それによって一日はスムーズに過ぎ、感謝をもって終わることができるようになった。

 最近、活字離れが進み、本を読む人が激減しているという。しかし私は敢えて本を読むことにしている。本を読むことによって知識を得るだけではなく、そこに提起されている問題と取り組み、深く考える。そのために繰り返し読むこともしばしばある。それによって生き方に大きな影響を受けることも少なくないし、時には一生を変えることもある。

 ペテロは、最初の説教で、ヨエルの預言を引用しながら言った。

   神は言われる。終わりの日に
   私の霊をすべての人に注ごう
   あなたがたの息子や娘は預言し
   あなたがたの若者は幻を見
   あなたがたの老人は夢を見る  (使徒2:17)

 幻はヴィジョン、夢は理想である。クラーク博士は、札幌農学校で若者たちに教え、去る時に言った。「ボーイズ、ビー、アンビシャス(青年よ大志を抱け)」。 その時、多くの学生たちがヴィジョンを与えられ、新渡戸稲造、内村鑑三など、近代日本のリーダーが生まれた。ポストモダンと言われる今、ヴィジョンをもってリードする者たちが多く求められている。