子どもたちに今! 伝えたい
「性といのち」の大切さ… 第17回 高齢出産への心構え

永原郁子
マナ助産院院長

助産師の友人などにも、若いうちに子どもを産んだほうがいいよと言われます。高齢出産も増えているようなので、あまり関係ないようにも思うのですが、年齢と出産は関係ありますか。焦りたくはないのですが、そういう話を聞くと心配になります。なにか身体のためにできることはありますか。(三十代女性)

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女性の年齢が三十五歳以上で、特に初産の場合を「高齢出産」と言います。一九九二年までは三十歳以上の初産婦を高齢出産と言っていましたが、社会の晩婚化にあわせて三十五歳に引き上げられました。WHO(世界保健機関)や諸外国でも三十五歳以上という考えが多いようです。
高齢出産は、おっしゃるように増加傾向にあります。最近では四十歳以上で出産する人も増加しており、二〇〇五年には二万人を超えました。一九五八(昭和三十三)年以降、四十七年ぶりとのことです。四十七年前との出産事情の違いは、現代は少子化の中での高齢出産であることです。
友人の助産師が「若いうちに子どもを産んだほうがいい」と言われた理由はいくつか考えられます。出産はすべての年齢においてリスクを伴いますが、年齢が上がることで高まると思われるリスクを挙げてみましょう。
まず、卵子の老化という考えがあります。それにより妊娠しにくくなったり、流産の危険も高まります。染色体異常などの発症率もわずかに上がると言われています。加齢によって妊娠の負荷が増して起こる異常も考えられます。妊娠高血圧症候群や、静脈瘤などです。また加齢によって体力や軟産道の弾力が低下することで、お産の時の医療介入が増えるなども考えられます。
しかし、これらはあくまでもリスクであって絶対的なことではありませんし、個人差が大きいことも言うまでもありません。私は現在、助産院でお産をお受けしておりますので、ガイドラインに沿って三十五歳以上の妊婦さんは連携病院の医師との協働で経過を診ております。妊娠、出産中の経過に問題があれば病院で出産していただくことになります。そんな私の経験から感じることは、高齢出産だからといって異常や難産が、目立って増えることはないということです。むしろスムースな妊娠出産の経過であることが多いのです。
それには理由があります。高齢出産の方はその自覚がありますので、十分な準備をしておられるということです。それによってお産への不安を軽減し、逆に楽しみや期待感を持ってお産に臨まれることが、安産の大きな理由だと思います。三十五歳以上の高齢出産は「丸高」とチェックされ、難産になる可能性が高いとされます。それで不安になることが、かえって難産を生んでいるのかもしれません。二十歳代でも三十歳前半であっても、準備がされていなかったり、不安の大きな方のお産は難しいことがありますから。
お産への準備については、何と言ってもお産の仕組みとその時々の対応策を知ることによって、不安を軽減することです。そして、お産を乗り切るための体力をつけること(妊婦体操やヨガなど)、体重コントロール(食べることと運動)、体を冷やさないことなどです。
妊娠する前に気をつけたらいいと思われることを挙げてみましょう。
まずきちんとした食事を摂ること。ミネラルやビタミン不足にならないようにバランスのよい食生活とともに、無農薬・有機野菜や、添加の少ない食材をおすすめします。遺伝子組み換え食品は避けられたほうがいいと思います。日常生活では、防虫剤や除草剤も注意してください。環境ホルモンは生殖機能に影響すると言われていますが、それらが含まれているものもあります。また、プラスチック容器やラップ類の素材の中には、加熱することで、直接環境ホルモンを口にする危険もありますし、ダイオキシンなどの大気汚染の原因になるものもあります。電磁波も気になります、特に下腹部に当たる部分に電気製品を使うのは避けたいです。また体を冷やさないことも大切です。
これらは生まれてくる赤ちゃんにとっても、家族の健康にとっても大切なことです。ちょっと気にかけることで、たくさんの情報が入ってくると思いますよ。
最近「赤ちゃんを作る」という表現をよく耳にしますが、いのちの神秘にふれると、到底「作る」などとは言えません。赤ちゃんは、神さまからおあずかりして育てさせていただくのだと思います。主のみ心を求めながら、その日を楽しみにお過ごしください。