ブック・レビュー 増補改訂版『幸福な家庭生活』愛し合うこと・助け合うこと

増補改訂版『幸福な家庭生活』愛し合うこと・助け合うこと
小寺 肇
日本同盟基督教団 野沢福音教会 牧師

わが家はどうするのか。反省と共に明日への希望が湧いた

 本書を読んでまず思わされることは、懇切丁寧で、しかも実践的な書であるということである。しっかりした神学的基礎を土台にしながら、著者の豊かな愛の牧会経験に裏打ちされた、実に説得力のある一冊である。著者を多少なりとも知っているものであるならば、「この著者にしてこの書あり」という感想を持たれることであろう。本書が、140頁ほどの薄いものであるにもかかわらず、非常な説得力を持って迫ってくるのは、やはり、著者がきちっとした神学的基礎を土台にして誠実に、愛の牧会を、教会だけでなく家庭においても、してこられたからではないだろうか。

 本書は、まず「家庭とは、親子夫婦がいっしょに生活する、社会の一番小さい基礎単位」と定義し、その家庭が「人間が造った制度ではなく、創造主である神が人間の幸せのために造ってくださった贈り物であり、制度であり、祝福」であると述べる。さらに、神はそれを造っただけではなく「幸せな家庭を築くための具体的な設計図を、聖書を通して与えてくださってい」ると言う。その設計図である聖書の通りの家庭を築けば、家庭は自然に幸せになるというわけである。実に明快である。

 全部で15章からなりたっているが、そのほとんどの章に、設計図である聖書に従っていくための秘訣が、箇条書きにされて掲げられている。たとえば、「夫婦げんかの時、守るべき十箇条。1 感情を自制して、非公開的、非暴力であること。2 過去のことを持ち出さず、今現在の問題点だけを話すこと。……」といった具合である。けんかの時、実に役立つ。

 最後では、幸福な家庭を築くために最も大切な秘訣が語られている。著者は、それを「聖霊に満たされる」ことであると訴える。心理学的アプローチがもてはやされる昨今、傾聴に価する一章である。読後、わが家はどうかとの反省と共に、明日への希望が湧いた。