ブック・レビュー クリスチャン生活の中心テーマ


松本雅弘
カンバーランド長老キリスト教会 高座教会牧師

本書は、著者のふるさと、山形県にある教会で数回にわたった礼拝とその後行われたセミナーでのお話をまとめたもので、その内容はタイトル『神との関係、人との関係』が示すように、まさにクリスチャン生活の中心テーマを扱ったものです。
著者は日本とアメリカで豊かな牧会経験を持ち、現在、IFM(家族・結婚研究所)の代表兼相談室長として個人、夫婦、家族を対象とするカウンセリングに従事してこられました。したがって、著者ならではの数多くの生きた事例を踏まえ「神との関係、人との関係」を扱っているがゆえに、非常に説得力があります。その説き明かしは具体的、実際的で、よく「伝わる言葉」で読者の心に迫ってきます。
幾つも印象に残る箇所がありました。「私は、どんな境遇にあっても満ち足りることを学びました」(ピリピ4・11)と語るパウロのことばに基づき、「『不可欠なもの』と『欲しいもの』を見分ける信仰」の大切さが説かれていました。著者はこの二つを混同することが問題を複雑化させる原因となることを読者に気づかせ、パウロが学びえたと告白する「どんな境遇にあっても満ち足りる」秘訣へと導いていきます。いつしか著者の紡ぐことばによって主にある取り扱いを頂きながら、恵みの深みへと心の目が開かれていくから不思議です。
日ごろ、経験するモヤモヤした部分や漠然としているところに、みことばの光が当てられ、その説き明かしによってことば化され整理されていく。そして自然と神の恵みと私たちの側での責任が区別され、委ねるべきことは委ね、引き受けるべきことは引き受けようとする心の構えもできてくる。そして最後にはすっきりとした読後感が残る、という書物でした。
個人的には、「神の声を聴くのを習慣にする六つの鍵」の箇所は興味深く、また信仰生活を教会という「コイノニア」の中でとらえることの大切さにも改めて教えられました。
 本書を通して、新しい視点から自らの信仰生活を見つめ直し、神さまと人との間に豊かな関係をいただくことができたら本当に素晴らしいことだと思います。
信じて間もない方も、ベテランのクリスチャンも共に恵まれる書物です。心から一読をお勧めいたします。

『神との関係、人との関係』
丸屋真也 著
B6判 900 円+税
いのちのことば社