ブック・レビュー 『札幌宣言21世紀における教会のチャレンジ』

『札幌宣言21世紀における教会のチャレンジ』
市川 康則
神戸改革派神学校校長

「危機」の時代、これからの教会を共に描く

 本書は、昨年開催された第五回日本伝道会議で採択された『札幌宣言』の解説書である。昨年は日本プロテスタント宣教一五〇周年の記念の年でもあり、日本福音同盟をはじめ、福音主義聖書信仰に堅く立つ教会・団体・キリスト者たちが全国各地から札幌に集まった。日本プロテスタント宣教の歴史は、国家との霊的戦いにおける教会の弱さであったと真摯に回顧し、これを踏まえて、現代世界を「危機」として的確に認識。それと共に、しかし決して悲観主義や無力感に陥ることなく、天地の主権者キリストの福音の希望に生かされていることを世界に向けて発信し、現代の人々と共に享受し共有すべく、積極的かつ低姿勢で宣べ伝えることを決意し、宣言した。宣言文は、「前文」「第一章 日本プロテスタント宣教一五〇年」「第二章 危機の時代における私たちの使命」(「第一節 危機の時代」「第二節 私たちの希望」「第三節 私たちの使命」)「第三章 宣教協力の実現」(「第一節 家庭において」「第二節 教会において」「第三節 地域社会において」「第四節 日本において」「第五節 世界において」)「結文」「祈り」から成っている。今回の札幌会議は、ローザンヌ世界伝道会議と連動して同じ一九七四年に京都で開催された第一回日本伝道会議から数えて三十六年目となり、二世代後の大きな出来事である。本書は、先立つ会議との連続性、特に日本の文脈における恒常的伝道課題(アジア諸国・アイヌ民族への責任など)と、とりわけ二十一世紀に入ってからの特徴的かつ緊急の課題(経済・家庭・学校・環境等での未曾有の危機への使命など)とを指摘し、「協力」体制におけるそれらへの取り組みを訴えている。また、伝道会議に出席されなかった方々をも交えた二つの座談会での討論も収録されており、各種専門領域(神学者、精神家医、弁護士等々)の観点から見た会議および今後の伝道課題への率直な批評・提言もあって、宣言の学びを助けてくれる。学習会などのテキストとして大いに活用されることを期待する。