ブック・レビュー 『妥協はしない』

『妥協はしない』
佐々木 敏郎
日本バプテスト同盟 彰栄保育福祉専門学校宗教主任

キリストの燃える愛が現された説教集

 ドイツの神学者ヘルムート・ティーリケは、「あなたが持っているもの、すべてを売り飛ばしてスポルジョンを買いなさい。たとえそのためには、古本屋を引きかきまわさなければならないとしても」と述べています(スポルジョン『説教入門』)。

 この度、「世界最大の説教者」「説教者の王」といわれるイギリス・バプテストの説教者、C・H・スポルジョンの説教六編『妥協はしない』が野田良晴氏によって出版されました。大きな喜びです。訳者は神学生時代から長年にわたって、ひたすら一筋にスポルジョン研究に情熱を燃やし、先に『ルック・ルック・ルック─C・H・スポルジョン説教集』を刊行しています。特に本書で注目されることは、スポルジョン自身が愛読してやまなかった「雅歌」から三編の説教が訳出されていることです。スポルジョン死去の日、彼の棺の上には愛読の聖書がおかれ、「雅歌」が開かれていたと伝えられています。

 「説教者スポルジョンは、その生涯を通じて、『イエス・キリストを見なさい』ということしか語らなかった」「彼のテーマはつねにキリストと人間の魂のためのキリストの愛であった。彼の説教はキリスト中心であり、キリストが高められることであった」(E・ベーコン『スポルジョン』)と言われます。「何よりも、何にもまさって、キリストをそして十字架につけられたキリストを説教すべきである。イエスが高く引き上げられておられるその場所に魂は引きつけられる」とスポルジョンは述べています。

 訳者は「この小著を通してスポルジョンが愛してやまなかった主への愛が少しでも燃え上がるなら、こんな嬉しいことはない」と願っていますが、本書は必ず読者に「キリストの燃えるような愛」をともしてくれることでしょう。訳者の労を心から感謝し、今後一層スポルジョン研究を深められることを願ってやみません。