ブック・レビュー 『和解の福音とは何か』

『和解の福音とは何か』
宮村 武夫
日本福音キリスト教会連合 首里福音教会 牧師

「沖縄宣言」をめぐることば・出来事として

 本書は、第四回日本伝道会議シリーズの三冊目。本論文集と「沖縄宣言」の密接な関係について、執筆者四名中三名が宣言文起草委員であったことから、「問題意識や論理展開の構図が、双方に共通するようなかたちで反映」(93頁)していると、藤原導夫先生は、簡明な「あとがき」で指摘しています。

「沖縄宣言」が、どのような聖書理解からことばとして記されたのか、またことばの背後には、どのような思索が重ねられていたのか、少なくともその一端を明らかにしてくれます。例えば、内田和彦先生は、総論的記述の「和解の広がり――教会、家庭、社会における和解」の項で、「和解を造り出す聖霊」(20頁)について言及しています。この論点は、紙面の量的制約にもかかわらず、佐布正義先生による「和解の福音とは何か」の「和解の務めと聖霊の働き」(40―45頁)の項に、その豊かな展開の示唆を見ます。

 また「和解の広がり」では、主イエスの弟子たちについての考察を通して、キリスト者・教会の課題とし、「常により広い公同的教会の視点から、……外の世界をみることが求められている」(56―57頁)と、藤本満先生は重いことばを紡がれます。

 さらに岡山英雄先生の「和解の究極――万物の和解」は、 日本の教会が共有する平和主義(75頁)に意を注ぎ、「現代の日本において教会が少数者であるという事実は、必ずしも否定的にのみ受け取られる必要はない」(79頁)と指摘し、「教会はほふられた小羊を主と崇め、和解の王国の民として非暴力を貫き、少数者であることを恐れず、『和解の福音』を宣教し体現してゆく」(90頁)と結ばれています。

 「体現」。この実例を、今年(2001年)6月10日号のクリスチャン新聞一面の記事と写真に見ます。写真には、「百年の中で分かれた十の教団の牧師たちが共に聖餐式の奉仕にあたった。司式は前日本ホーリネス教団委員長の松木祐三氏」と説明。沖縄宣言文起草委員会を委員長として導かれた、松木先生が加わる「体現」です。