ブック・レビュー 『ロイドジョンズ
ローマ書講解 5章
救いの確信』

『ロイドジョンズ ローマ書講解 5章 救いの確信』
小泉 健
東京神学大学常勤講師/日本基督教団センター北伝道所牧師

一節、一言を重んじる聖書講解

 この本の著者マーティン・ロイドジョンズは、二〇世紀においてもっとも大きな影響を及ぼした説教者の一人です。数多くの説教集を刊行していますが、その中から代表作を挙げるとなれば、本書を含む『ローマ書講解』シリーズということになりましょう。

 このシリーズは大きなものなので、日本語訳は望めないかとあきらめていました。ところが昨年、一冊目『三・二〇―四・二五 贖罪と義認』が出たのに続いて、このたび『五章 救いの確信』が出版されたことに驚き、喜んでいます。

 ロイドジョンズの説教者としての働きは五十年以上にわたりますが、その中心は、ロンドンのウェストミンスター・チャペルの牧師としての約三十年間の奉仕にあります。主日の朝と夕の礼拝において、また金曜夕の聖書研究会において、説教をし続けました。

 ロイドジョンズの説教のスタイルは、聖書の一節一節、一言一言を重んじる聖書講解です。一度の説教で数節しか進みません。しかし、木を見て森を見ないような説教ではありません。前後関係をきちんと読みとることを重んじ、聖書全体との関連にも注意を払いながら、深く掘り下げていきます。

 ロイドジョンズはこれほど有名な説教者でありながら、説教がテレビで生放送されることをほとんど認めませんでした。それは、放送に合わせて時間制限されると、聖霊の自由な働きを妨げることになると考えたからだと言われています。

 ロイドジョンズの説教は、約五十分から一時間だったそうです。わたしたちは長いと感じますが、実際の会衆は魅了されたのです。

 ウェストミンスター・チャペルでの働きの最後の十二年半、五十五歳から六十八歳にかけての円熟期に、ロイドジョンズは「ローマ書講解」に取り組みました。五章を扱う本書の全体を貫くテーマは、救いがどれほど絶対的なものであるか、その「確かさ」です。それを聞き手がよく理解することによって、救いの確信を得るようにと、力を込めて語ります。