ブック・レビュー 『キリストのように生きる』

『キリストのように生きる』
竿代忠一
インマヌエル綜合伝道団 船橋キリスト教会牧師

神とのへだてなき交わりから信仰者の歩みは可能になる

 デニス・キンロー博士は二つの世紀にわたって貴く用いられている霊的巨人であると私は考えています。久しい間、米国アズベリー大学学長として多くの若者を育てた教育者、旧約学の優れた学者、力ある説教者であるのみならず、宣教の分野においても東洋宣教会(OMSI)の理事長として世界宣教に貢献するミッショナリ・ステイツマン(洞察力と幻をもって宣教を指導する器)であります。そのキンロー博士が一九九九年、国際宣教会議においてなされた基調講演が本書『キリストのように生きる』に収められています。

 本書には、副題の「新世紀に生きるクリスチャン」が示すように、時代に対する預言者的洞察と聖書の正確な釈義、講解や霊的適用、そして、豊富で実際的な例話──キルボーン、ギラム、カートジアン、モリソン、ジョーンズ、ウィルバーフォース、ブース、カウマン、オッケンゲー、カマレーソンなど(その多くは著者と個人的親交のあった器たち)──が効果的に記され、著者自身の体験も興味深く語られています。

 この本書のキーワードは「歩む」ということです。この言葉はクリスチャン経験のエッセンスを示しています。信仰者の歩みは、神との関係においてへだてなく交わることによって可能になると教えています。その中で心に残るいくつかの珠玉の文章を紹介します。

 「奉仕が、私たちの仕える神の場所を奪ってしまうことは易しい」(七〇頁)。

 「キリストのようになるのは、彼がみこころのままにお使いになることのできる場所へ行かせてくださる時だけです」(九五頁)。

 なお訳者の蔦田緑乃師はフィリピンへの宣教師で、本書に深い感銘と共鳴を覚え、このメッセージを日本の霊界に伝えたいとの重荷から翻訳を思い立ったとのことを書き添えたいと思います。