ビデオ 試写室◆ ビデオ評 90 「マザー・テレサ」(3)

「マザー・テレサ」
古川第一郎
日本キリスト改革派 南越谷コイノニア教会牧師

混沌とした世界に、愛を訴えたい!

 いよいよ『マザー・テレサ』がDVDになって発売されました。映画をご覧になった方も、見逃された方も、ぜひゆっくりと味わっていただきたいものです。劇場で観た映画になかった感動が、二つありました。

1.稀に見る美しい吹替

 日本語吹替版を見て、どんどん引き込まれていく自分に驚きました。これほど正確で心に触れる翻訳を、よく成し遂げてくれました。字数の制約のため不満な箇所がいくつかありましたが、吹替版にはありません。聖書の言葉も、祈りも、正確に訳されています。

 「ここでの働きは大切だけど、もっと大切なことは、それが祈りに支えられていることなの。祈りがすべての原動力なのよ!」と訴えるマザーの言葉には、私自身ぐっと引き上げられるような励ましを受けました。吹替の祈りや説教には、苦笑してしまうものが多いだけに、こんなにメッセージが伝わってくる吹替は、稀に見る逸品です。

2.特典映像(イタリヤでの特別番組、オリビア・ハッセーの日本でのインタビューと記者会見)

 オリビア・ハッセーをはじめ主要な役は超一流のスター俳優ですが、皆、ただただ「愛」という一字を訴えたいという思いで心は一つです。「観た方が他人への愛について少しでも考えてくれれば大成功です」というオリビアの言葉が、みんなの心を代表しています。

 「私は、よほど情熱を感じなければ、その仕事をやりません」と、オリビアは言います。20年間、マザー・テレサの本や記事を読み漁り、いつか演じたいと願っていた彼女に、突然の電話依頼。その翌日にローマ、一週間半後にスリランカで撮影開始。準備の時間もないスケジュールでしたが、彼女の頭の中では20年間かけた準備ができていました。暑さのために、体調は終始最低で、抗生剤を持ち歩いていたと言います。しかし、マラリヤにかかっても働いたマザーのことを思い、「できないはずはない」と自分に語りかけて撮影を終えました。

 「まるでマザーを見ているようだった!」マザー・テレサと一緒に働いたシスターたちの感想です。「シスターは絶対うそは言えないから、彼女たちが認めてくれたら、誰の評価も関係なく嬉しい!」というオリビア。

 彼女の日本の人々へのメッセージは真剣です。「忙しいすべての人が、一日一分でも他の人のために心を使ってほしい。どんなことでもいいし、祈るだけでもいいのです。誰でもできます。それだけで世の中が変わるのです。そのために、このようなすばらしい人の映画が必要なのです。愛を忘れないでください。愛が大切です。私たちは一つです!」

 「私は神の御手にある鉛筆です。書くのは神ご自身です。」(マザー・テレサ)

 神様は、今、これらの俳優、声優、スタッフも鉛筆として握って、私たちの心に恋文を刻もうとしておられるようです。