ビデオ 試写室◆ ビデオ評 115 あなたは、必ず誰かに必要とされている
DVD「こいぬのうんち」Part2

DVD「こいぬのうんち」
古川第一郎
日本キリスト改革派 南越谷コイノニア教会牧師

 (何か食べながらお読みの方は、この最初の段落は飛ばすことをおすすめしておきます)。

 この間こんな話を聞きました。象は、30頭ほどで、群れをなして歩くそうです。リーダーは雌で、みんなを木のあるところへ導きます。しかし、木はやがて枯れていきます。では、なぜなくなってしまわないのか?

 象の群れが木のあるところに集まると、それぞれに、長い鼻で、木の実をとって食べます。ほとんど噛まないので、種もそのまま排泄されます。つまり、たくさんの種と肥料がいっしょに、土の中に入るのです。そして、その場所に木が生える。つまり、「古い木から新しい木へ、命をリレーさせるのは、象のうんちである」ということになります。人から嫌われるものが、意外にも、ものすごく必要な存在だということに、驚きました。

 ある小説に、こんな言葉が出てきます。「森の中には、大きな木もあるし、枯木もある。草の落ち葉もあるし、昆虫や鳥や動物がいて、おたがいにエネルギーや物質交換して、一つの生態系を作っているでしょ。……そういう点からみると、枯木も落葉も必要な大切なものでしょ。……人類はそれを学んで、社会をつくったんだけど、それを人間同士だけでやろうとしたわけね。たとえば枯木も落ち葉も大切だということが、一人の人間に犯すべからざる、唯一の存在価値を認めようという、社会の理念になったようにね。……能力の点で、文句を言うのは、枯木だから駄目だという扱いをしているわけでしょ。それはないのよね」(藤原審爾『落ちこぼれ家庭』新潮文庫より)。

 「こいぬのうんち」くんは、動くこともできず、近づいてくる動物たちは、「臭い」「汚い」「やだ」と言って、みんな離れていってしまいます。自分は、何の役にもたたないし、誰にも必要とされないし、決して愛されない存在だとわかり、孤独と虚しさ、劣等感と自己嫌悪にとりつかれ、自分の存在を呪います。

 でも、ある日、優しい声を聞きます。彼に感謝し、彼を必要とし、彼に微笑む存在。それは、かわいいタンポポの蕾でした。「あなたは私の肥料になるの」。大切な、なくてはならない存在だったのです。彼に助けられて、タンポポはきれいな花になっていきます。動物にも人間にも嫌われる彼が、植物には絶対必要な存在だったのです。

 まして、人間であるあなたが、必要とされないなどということがあるでしょうか?

 きれいなクレイアニメで、田園風景と共に、ほのぼのと描かれています。ベッキーの声もかわいいです。妻が、「うんちくん、かわいいね」と言っていました。