ビデオ 試写室◆ ビデオ評 102 対照的な二つの名画
『キング・オブ・キングズ』(1961)
と『偉大な生涯の物語』(1965)

「KING OF KINGS」
古川第一郎
日本キリスト改革派 南越谷コイノニア教会牧師

 イエス・キリストの生涯を描いた映画を観比べる試みをしています。今回は、60年代の2作品を、観比べてみましょう。

 『キング・オブ・キングズ』は、キリストの顔が出てくる最初の映画で、監督がニコラス・レイ、主演はジェフリー・ハンター。オーソン・ウェルズのナレーションが物語を導きます。一方の『偉大な生涯の物語』は、監督ジョージ・スティーブンス、主演はオーストラリアの名優マックス・フォン・シドー、さらにジョン・ウェイン、シドニー・ポアチエ、テリー・サバラス、チャールトン・ヘストン、パット・ブーン、ドロシー・マクガイアなどの、そうそうたる顔ぶれで、皆真剣に演じています。『キング・オブ・キングズ』は華やかに、『偉大な生涯の物語』は静かに進んで行きます。

 キリストを見る視点の違いに、注目してみましょう。『キング・オブ・キングズ』は、占領国ローマに対する被占領民の戦いにスポットが当てられます。その中心はバラバ(ハリー・バーディノ)です。バラバとイエスを結ぶのがイスカリオテのユダ(リップ・トーン)。独立のためにイエスを王にしようとした人々がいたことが、聖書に書かれています。蜂起、流血、民衆の死が描かれます。ユダヤの民衆がどんなに悲惨で、ローマを憎み、独立の指導者をイエスに期待したか。最後まで彼らの期待に答えないイエスを奮起させようと、ユダはローマ兵にイエスを売り、イエスが戦うことを期待します。しかし徹底して、戦わず、十字架につけられて敵のために祈るイエス。民衆にとって期待外れのイエスの姿に、クッキリと、暴力によらない平和への道が見えてきます。

 『偉大な生涯の物語』は、誰の視点からイエスを見ているのか?随所随所に出てくる顔があります。サタンです。荒野の誘惑以来、あの不気味な老人の姿をとったサタンは、表には出ません。が、イエスの説教を聞く  群衆の中にいます。ユダが裏切りの決心をしたとき、そこにいました。十字架につけろ」と最初に叫ぶのは彼です。イエスを否むペテロの後ろにもいます。サタンはいつも、全く目立たずに、群集を扇動し、弟子を惑わし、イエスに無言で挑むのです。しかし、あの空の墓に彼の姿はありません。ハレルヤコーラスがイエスの愛の勝利を歌い、サタンは消えていくのです。

 観比べることは、優劣をつけることではありません。いろんな角度から見ることで、立体的・多面的に、「主はどんな方か」、瞑想することができるのです。