わが家の小さな食卓から
愛し合う二人のための結婚講座
第12回 結婚にはメンテナンスが必要
②どうしても行き詰まってしまう問題

大嶋裕香
 1973年東京生まれ。宣教団体でキリスト教雑誌の編集、校正を手がける。99年にキリスト者学生会(KGK)主事の夫と結婚後、浦和、神戸、金沢と転々としながら年間100~200名近い学生、卒業生を自宅に迎える。KGKを中心に、夫と共に結婚セミナーで奉仕。その傍ら、自宅でパン教室、料理教室を開き、子どもたちにパン作りを教えている。13歳の娘と10歳の息子の母親。

結婚生活を送るうちに、二人で話し合ってもどうしても解決できない問題が出てくるということはないでしょうか。話していても平行線をたどるばかりなので、蓋をしてしまっていること。相手に通じないので、あきらめてしまっていること。普段からどれほど丁寧にコミュニケーションをとっている夫婦でも、一つ二つそんな問題があるのではないでしょうか。
そのようなときは、信頼できるクリスチャンの夫婦に間に入ってもらうと、解決の糸口が見つかることがあります。私たち夫婦も、長年抱えていた問題が交わりの中で解決できたという経験を何度もしてきました。ですから、わが家の結婚後の学びの中でも「二人で行き詰まってしまうテーマはありませんか?」と必ず質問することにしています。
すると、「実はこういうことで悩んでいまして……」と抱えている問題を出してくださり、私たち夫婦もともに解決策を考える時が与えられます。二人だけで話し合うとどうしても感情が爆発し、大げんかが始まり、結局問題は何も解決しない……。そのくり返しでは疲れ果ててしまいます。しかし、他者がいることで感情的にならず、夫側にも妻側にも立って公平に話を聞いてもらえることで冷静に話し合うことができるようです。
そして、たとえその場で円満解決しなくても、解決の糸口が見えただけで、ずいぶん心持ちが違います。自分の言い分を聞いてもらい、共感してもらえただけで「もう十分満足しました!」という方もいます。眉間に皺を寄せてうつむきがちだったカップルが、四人で話し合った後にすっきりとした表情になって、微笑み合いながら帰っていきます。「あんなにぎすぎすしていたのに、今やラブラブ!」と、その落差に戸惑いつつも、解決を与えてくださる神様に心から感謝するのです。

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実は私たち夫婦にも、長年抱え込んでいた問題がありました。二人で話し合っても、どうしても埒が明きません。私も半ばあきらめかかっていました。そんなとき、唄野隆先生、絢子さんご夫妻に私たち夫婦の悩みを聞いていただく機会が与えられました。その悩みというのは、「夫の外部奉仕」についてです。学生伝道団体で働いている夫は、日曜日はほとんど毎週、全国各地の教会で礼拝説教をする奉仕があります。私と子どもたちは家の近くの教会に出席するので、家族全員でともに同じ教会で礼拝をささげられない、というのが悩みでした。当時、幼い子どもたちを私がひとりで教会に連れていくのは大変なことでした。しかも、夫の転勤で出席教会も変わったばかり。慣れない教会の中で夫がいない寂しさ、悲しさ。
「家族全員で一緒に礼拝がしたいの!」と私が訴えても、夫は「仕事だから!」の一点張り。
このような状況をじっと聞いていた隆先生が一言。「それって、大嶋君の自己実現ちゃうか」絢子さんが一言。「ご主人を奉仕に送り出すことは、裕香さんに与えられた十字架じゃないでしょうか」
このお二人の言葉は、夫の心にも私の心にも深く突き刺さり、変革をもたらしたのでした。
「『今まで外部の教会での奉仕は仕事だからしょうがない』としか思わなかったけれど、奉仕を次々に入れることは自己実現だったのか?」と問い直す夫。
「もちろん仕事だってわかってる。神様の働きだってわかってる。でも、悲しくてつらい。だけど、イエス様が負われた十字架を負うように問われているの?」と考え直す私。
そして私たち夫婦が導き出した結論は、「一か月四回の日曜日のうち、外部奉仕は二回まで。あとの二回は出席教会で家族全員で礼拝をささげる」でした。このルールは現在も変わっていません。お互いに譲り合い、納得できる結論でした。それからというもの、夫の留学や子どもたちの思春期など、懸案事項が出てきたときは必ず唄野先生のお宅を訪ね、話を聞いていただくことにしました。すると毎回、実に見事に目の前がぱあっと開けていくような思いにされるのです。お宅訪問は恒例となり、今では毎年一度は先生のお宅で私たち夫婦のメンテナンスの時を持つようになりました。交わりの中で働かれる神様の素晴らしさを体験すると、本当にやみつきになってしまいます。交わりに助けられながら、夫婦となっていくのです。