なぜ今、バックストンなのか バックストン著作集全十巻

中島秀一
日本イエス・キリスト教団 荻窪栄光教会牧師

 この度、バックストン来日百二十五年を記念して、いのちのことば社から「バックストン著作集 全十巻」が刊行される運びとなった。彼の日本宣教は一八九〇年から一九三七年に至る約四十年間に及ぶ。その間彼は数度来日し、約二十年間日本に滞在し、多くの聖潔説教や聖書講義をなし、当時のキリスト教界に多大な影響を与えた。その説教等は忠実に筆記され、書籍として残された。まさに霊の遺産ともいうべきわれらの宝である。
これらの書籍の多くは絶版となり、入手できたとしても現代人が読みこなすにはかなりの困難が立ちふさがる。そこで彼の珠玉の説教を原文を可能な限り損なうことなく、読みやすい現代文にして出版されるのが本書である。本書が低迷を極めているわが国の教会にリバイバルの風穴を開けることを心から信じ、期待してやまない。

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彼の説教には、日頃の忠実なディボーションに裏打ちされたみことばが自由自在に引用され、その適切さのゆえに「みことばと聖霊」が満ちあふれたものとなっている。読者は知らず知らずのうちにバックストン・ワールドに引き込まれ、みことばと御霊のシャワーを浴びることになる。その結果、悔い改めと信仰に導かれ、御霊による潔めと盈満に与り、ついに恵みの高き嶺に登るに至る。まさに「霊的解釈=霊解」と呼ばれる所以である。
都田恒太郎は『バックストンとその弟子たち』において「バックストンとその弟子たちを中心としたいわゆる純福音グループ」を「松江バンド」と位置づけ、その働きを高く評価している。工藤弘雄は『日本開国とプロテスタント宣教150年』において、バックストンの流れを、熊本、札幌、横浜に続く第四のバンドとして「松江バンド」と紹介している。本書が教派を超えて広く読まれ、日本教会史観を共有し、日本の教会が一丸となって日本宣教に向かうに至ることを切願しつつ、一読を勧める次第である。