となりの人々 6 ボッカさん

ボッカさん
森住 ゆき
日本福音キリスト教会連合 前橋キリスト教会会員

 ボッカさんは「歩荷」と書くんだそうな。読んで字のごとし、なるほど。山小屋と契約を結んで、食料品などの生活必需品をふもとから運びあげる。

 少なくて40?、達人になると100?以上の荷を背負うと聞いた。帰りには空き缶や残飯など、山に残しておけない物を背負う。きつい急登や岩がむきだしのガレ沢などで出会うと、呑気に「こんにちは」などという挨拶もためらわれ、へへーっと心で低頭して道をあける。

 仕事中のボッカさんの視線は足もとに集中し、景色を楽しんでいるようにはとても見えない。あたりまえか。

 考え込むように腕組みしていたり、何か祈っているかのように手のひらを組んだ人もよく見かけるが、あれは荷物とのバランスをとるためなのだろうか。何だかとってもテツガク的に見える。たぶん誤解なのだけれど。ただ、山が好きでなければできない仕事であることだけは確かだ。

 毎夏、クリスチャンの青年たちが福音の届きにくい地方を中心にトラクト配布をする働きがある。

 若者の体力がなければとても無理な山奥の集落などに出かけていって配ったというニュースレターを読むと、「おおっ、ボッカさんだよ」と思う。山奥は無理でも、私もまた身近な誰かのために、小さなボッカでありたいと思う。