さわり読み 話題の書籍『憎み続ける苦しみから人生を取り戻した人々の物語』 ちょっとさわり読み

『憎み続ける苦しみから人生を取り戻した人々の物語』

 もし友達が銃をくれたら、あなたは何をするだろうか?

 ロジャーにとって、それは簡単な質問だった。彼はそれを使ったのだ。そして、チャンスがあればもう一度使いたいと言う。ロジャーの全人生は、娘の死についての、どうしようもない復讐の思いだけで満たされている。

 サラは自転車に乗っていて、飲酒運転の車にひかれた。ほぼ即死だった。誰が悪いのかは、明らかだ。

 以前にも飲酒運転をして無免許になっていた運転手は、殺人の罪で刑務所に入れられた。しかし、ロジャーはそれで充分だとは考えなかった。運転手が出所すると、ロジャーは銃を借りてきて、彼を撃ったのだ。もちろん、はっきりした殺意を持って。しかし、驚いたことに、彼は計画的に殺そうとしたというのに無罪となった。陪審員たちは、全員一致でロジャーに「無罪」の評決を下したのだ。……長い懲役を免れたロジャーは、それでも満たされることはなかった。

 私は、彼と妻のキャシーと話をしたが、彼らの頭にはサラを殺した男に復讐することしかなかった。

 彼らの話を聞きながら、私は二人の張り裂けんばかりの悲しみに圧倒された。サラの両親がサラの死から離れられず、不幸をふくらませている様子に、いっそう大きな悲しみを感じずにはいられない。

 一つの地獄を経て、彼らは赦すこと、解放されることができないがために、もう一つの地獄に向かってしまったようにみえた。憎しみと恨みの日々を積み重ねることによって、どんな癌に侵されるよりもひどく蝕まれていったのだ。

 ロジャーやキャシーのような人々が「赦すこと」を学ぶ方法はあるのだろうか。彼らが恨みから解放される道はあるのだろうか。……この本には、大変な困難を乗り越え、自分に罪を犯した者を赦す力を見出し、平安を探り当てた普通の人たちの話が詰まっている。著者はこれらの話すべてに寄り添い、裁くことなく記している。どれもが感動的であり、これを読めば今までと同じ自分ではいられない。彼らの物語は、気をつけないと自分を食いつぶしてしまう私たちの本性の一面について教えてくれる。同時に、恨みや憎しみの悲劇的な呪いから抜け出る道をも示してくれる。この本は、人を赦すことに困難を感じている人、そしてよくあることだが、自分自身を赦すことに困難を感じている人、いずれにとっても力あふれるメッセージを与えてくれる。

スティーブ・チョーク(序文より抜粋)