これって何が論点?! 第14回 「選挙」を知ろう!(下)

星出卓也
日本長老教会
西武柳沢キリスト教会牧師。
日本福音同盟(JEA)社会委員会委員、日本キリスト教協議会(NCC)靖国
神社問題委員会委員。

実は、一度も選挙に行ったことがないので、どんな選挙があるのかもわかりません。今は、何が起こっているのですか。選挙に行く意味はありますか。選挙に参加するにはどうしたらいいのでしょう?Q 今後、選挙の争点となるのは何か。
昨年十二月に特定秘密保護法を強行採決し、今年の通常国会でも野党の質問を無視する形で、次々と法案が強行採決されました。さらには、反対する国民による大規模デモも無視して(ほとんどニュース報道もされず)、「集団的自衛権の行使容認」が七月一日に〝閣議決定〟されました。「特定秘密保護法」には国連委員会も懸念を表明し、「集団的自衛権の行使」は与党内からも反対の声があがっています。しかし、政策に疑問を抱き、憲法違反や反対を訴えても、「国民によって選挙で選ばれた」=「国民の信任を得ている」と押し切られてしまいます。前号で述べたように、今の選挙制度は、小選挙区ではわずか四割の得票数で約七~八割もの議席を得ることができる、不公平かつ小数政党に不利な制度ではありますが、やはり「選挙」は重要なのです。日本は今、非常に重大な岐路に立たされています。これからの選挙は、安倍政権が推し進める戦前回帰路線に進むか、それを止めるか、将来を決定するものとなるでしょう。

Q 次はいつ、何の選挙があるのですか?
菅義偉官房長官は七月七日の記者会見で、集団的自衛権の行使容認を含む法整備について「向こう約一年かけて国民の前でしっかり議論を進めていきたい」と語りました。今秋の臨時国会での審議を見送った理由は「準備に最低でも三、四か月かかる」、十分な審議時間が確保できないとしていますが、強引に打ち切ってでも強行採決してきたのに、急に国会審議を大切にし始めるのも不自然です。これは、来年四月の統一地方選挙で自民党推薦立候補者が票を落とすことを恐れているものと思われます。来春の統一地方選挙では十一都府県の知事選挙が行われます。この選挙後、次の国政選挙は衆参両議院ともに(任期満了の場合)二〇一六年ですから、しばらくは選挙がありません。よって、春の地方選挙後ならば、通常国会会期末の六月に多くの法案の強行採決を行って、国民の反発を招いても「問題なし」と考えているのでしょう。ということは、現政権は国民の反対意見を無視しつつも、「選挙で票を落とすこと」を非常に恐れているのです。与党の議席が減って過半数を割れば、もはや強行採決もできなくなります。どの政権も政党も、選挙結果を気にしているからこそ、やはり「選挙」はとても重要なのです。

Q 地方選挙も、政党と関係があるのですか?
地方自治体の知事や議員にも、各政党から推薦された候補者が出馬するため、政党と無関係ではありません。また現実に紛争が起こり、集団的自衛権を行使する際には、地方自治体が運用主体を担う、重要な受け皿となります。これまで自民党以外が与党となったのは、戦後史の中でわずか四回です(一九八九年の第十五回、二〇〇七年の第二十一回参議院選挙、一九九三年の第四十回、政権交代をした二〇〇九年の第四十五回衆議院総選挙)。いずれの場合も野党各党が協力したことで得られた結果でした。もちろん野党は基本政策も異なり、協力するには難しい現実がありますが、集団的自衛権の行使は容認できないという一致点を最重要課題として優先させ、野党連合実現のために議員に陳情し、各政党に働きかけることもできるでしょう。少ない得票数で多数の議席が得られる現選挙制度の問題点も、逆に言えば、多くの人が選挙に参加することで変化を与えることが可能だということです。「政治に失望したから選挙に行かない」ではなく、家族や友人を誘って、ぜひ参加してほしいと強く願っています。「選挙に行かない」ことは、主権の放棄、白紙委任状に他ならないからです。

DVDなのですが、川崎市議会議員補欠選挙を戦った山内和彦氏の選挙戦を追ったドキュメンタリー 想田和弘監督作品『選挙』(紀伊國屋書店2007年)『選挙2』(2013年)は、現在各地で上映会が行われています。日本の選挙について、よくわかる作品です。 http://senkyo2.com/jyouei_senkyo2/