こころに写るもの 3

こころに写るもの3
岩渕まこと

 道を歩いていると突然目に飛びこんでくるものがあります。私は足を止めて、カメラを取り出してシャッターを切ります。旅行中に名所・旧跡で立ち止まるのならば分かりやすいのですが、私の場合は少々違っています。それが顕著に現れるのは家の近所を歩く時です。

 家では一日に一度、愛犬の散歩に出かけます。もちろんカメラはぶらさげています。散歩のコースは何種類かあるのですが、それぞれのコースにシャッターを切りたくなる場所があります。それは道ばたの一本の街灯だったり、河原の土手の上にある雲だったり、木立に囲まれた坂道だったりします。要するにどこにでもあるような、なんでもない風景なのです。しかし私はそこで足を止めます。どうやら私は空に向かって立っているものが好きらしいですね。それから、越えれば世界が開けそうな、河原の土手も好きらしいです。そしてちょっと上り坂だけれど、先の見えない曲がった道も好きらしいです。

 先日ある方が私のことを表して、“チャレンジャー”だと言ってくださいました。これは正直私にとって意外なことばでした。しかし自分が散歩の途中で、何故立ち止まるのかを思いめぐらせている内に、未知の世界への憧れが強いのかもしれないと思うようになりました。昔から物事の本質に迫りたいという気持ちが強く、なんでも興味を持てば、とことんのめり込んでいく性格だとは思っていましたが、プラス、新しい世界へ踏み出したいと願うチャレンジャー的な面もあるのかもしれません。犬を連れて、街灯を真剣に写している姿は、すでに平凡な日常の外かもしれません。