こころに写るもの 1

こころに写るもの1
岩渕まこと

 星野富弘さんとのコラボレーションも、昨年三作目の「サフランのうた」で完結となりました。花の名前といえば、「ダリア」と「ひまわり」の区別さえおぼつかなかった私が、星野さんの作品を歌わせていただくことになるとは、驚き以外の何ものでもありません。

 星野さんの描く花は、時に笑い、風にゆられ、人目のつかない所で咲きほこり、いのちのバトンを握って空を飛んで行きます。

 花が咲いている時間はそう長くはありません。種としてまっ暗な土の中にいる時からいのちの舞台が始まります。殻を破り、芽を出し、地上に顔を出す。光を浴びながら、地下に根を張り、水と養分を吸い上げる。そして短い時間、個性的な花を咲かせる。人目につかない時間、まわりの草にまぎれている時間のほうがずっと長い。

 この度、本誌の表紙に私の写真を使っていただくことになりました。「この図々しい素人が」とお叱りを受けそうで、緊張と気恥ずかしさが行ったり来たりしていますが、最近のカメラの実力のおかげで撮れたカットと思っていただければ、まちがいありません。花のほとんどは、家のそばに咲いていた花達です。

 最 初の頃は写真の練習という気持で撮っていました。ですから見栄えのする花、目立つ花ばかりを写していました。しかし、星野さんの作品にメロディーを添えながら、花達にひそんでいる“いのち”や“ことば”を感じるようになりました。人もつき合ってみないとわからないように、花も同じでした。時々花に話しかけている人を見て、小さなクエスチョンマークを出していた私ですが、今では花が近くなって、花に話しかける日がそう遠くないかもしれません。