〝新島八重”という生き方 現在を生きることが、未来を造る

前川隆一
西日本福音ルーテル教会 出雲教会牧師

守部喜雅氏の『サムライウーマン新島八重』、一気に読ませていただきました。あの会津戦争敗北の戦禍の中から、実は何人もの女性がキリストを信じる信仰をもって立ち上がり、新しい時代を切り開いていきました。言うまでもなく、八重もその中の一人です。しかし、会津というところは、かつて蒲生氏郷というキリシタン大名が治めていた地であり、徳川の時代になると、多くのキリシタンの殉教の血が流された地でもありました。
八重は、新島襄と京都で出会い、二人三脚で、あの同志社大学の前身である同志社英学校を設立、有用な人材を新しい時代に送り出していきます。
それとともに八重は、京都で茶道と出会い、やがて師範にまでなっていきます。八重の時代、茶道というとほとんど男性がたしなむものでした。しかし、今日、茶道の人口の七割を女性が占めている、と言われます。その背景に八重の存在があったということも、この本を通して知りました。
「われわれは、現在についてほとんど考えない。そして、もし考えたにしても、それは未来を処理するための光をそこから得ようとするためだけである。現在は決してわれわれの目的ではない。過去と現在とは、われわれの手段であり、ただ未来だけがわれわれの目的である。このようにしてわれわれは、決して現在生きているのではなく、将来生きることを希望しているのである。そして、われわれは幸福になる準備ばかりいつまでもしているので、現に幸福になることなどできなくなるのも、いたしかたないわけである」(一二七頁)
パスカルの『パンセⅠ』(中央公論新社)の一節です。私たちは、現在を生きるよう召されています。そして、現在を生きるとき、それが未来を造っていく、そんなインスピレーションを与えてくれる本です。NHK大河ドラマ「八重の桜」が放映されるこの年、この本が広く伝道に用いられるよう願っています。

出版記念
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