特集 神戸で共に幻を─第六回日本伝道会議への招き 再生へのRe-VISION

JCE6開催地委員会 副委員長
関西聖書神学校 学監
鎌野直人

第六回日本伝道会議(JCE6)が九月二十七日から三十日にかけて神戸コンベンションセンターを会場として開催されます。一九七四年に京都で第一回目がもたれて以来、一九八二年(京都)、一九八九年(那須塩原)、二〇〇〇年(沖縄)、二〇〇九年(札幌)と継続されてきました。
JCE6のテーマは、「再生へのRe-VISION―福音・世界・可能性」です。これは、列王記第二、六章一七節から取られたものです。強大な軍隊の前でたじろぐ若者の目が開かれ、信仰の目で同じ現実を見直すことができるようになり、そこから、新たな展開が生み出されていきました。同じことが再生を求める私たちにも必要とされています。主の働き(福音)とそれが生み出したものを見直し、置かれているところ(世界)を見直し、仕える姿(可能性)を見直す。福音とそのインパクトの素晴らしさを知るならば、喜びに押し出され、世界の現状を真正面から見据えることができる、さらに、可能性に目が開かれ、新旧のチャレンジに取り組むことができる、と信じてこのテーマとしました。

Re-VISION「見・直す」、これは決して、JCE6から始まったものではありません。JCE5(札幌)で二つの点から伝道会議が「見直されて」きました。まず、七年に一回、会議を定期的に開催することが決められました。JCE6は、JCE5のテーマを掘り下げ、実践を継続しつつ、この七年間に起こった出来事に注目して、JCE7(二〇二三年)への展望を具体的に描くよう位置づけられています。前回を振り返り、次へと目標を定めつつ、今を考える会議となりました。
もうひとつはプロジェクトの導入です。宣教の具体的働きが、時代の求めに応じるがために断片的になりやすかったものを「チームで、継続して進める」ことへと見直し、七年ごとの会議をそれぞれのプロジェクトの里程としました。会議のために何かを進めていくのではなく、各プロジェクト参加者が継続して活動を進めつつも、その「見直し」の機会として伝道会議を用いるようになりました。
JCE5からの遺産を見直しつつ、JCE6ではどのような幻(VISION)を見ようとしているのでしょうか。引き継いだプロジェクトを、新たに導入したコイノニア(交わり)とアナロギア(相似)と組み合わせて、日本と世界に住む大切な方々に福音を共に届けることができる宣教協力のインフラを造る、です。「楽しいインフラ造り」が合い言葉です。
プロジェクトを見直して、十五としました。うち十二は、六つの分野に分けられます。聖書信仰の成熟、日本社会と宣教(神学)、教会と「国家」、持続可能な社会の構築(社会)、災害対応を通して仕える教会(援助協力)、ファミリーミニストリー(女性)、ディアスポラ宣教協力、ビジネス宣教協力、教会開拓・増殖、痛みを担い合う教会(宣教)、青年宣教、子ども(青年)。神学、社会、援助協力、女性、宣教、青年という六分野は、日本福音同盟(JEA)の六専門委員会と重なっています。六分野全体を支える総合プロジェクトとして、「日本宣教170?200」(このプロジェクトがまとめた基礎的なデータが『データブック「日本宣教のこれからが見えてくる?キリスト教の30年後を読む?」』に掲載されています)、宣教協力とそのインフラ造り、教会の誠実さへの変革の三つを進めました。プロジェクトはJCE6のプログラムの中核であり、宣教協力のエンジンです。会議への参加者はみな、どれかのプロジェクトに加わります。次世代の働き手を含んで構成されているプロジェクトのチームと共に、宣教の具体的な働きを積極的に推し進めていくためです。

参加者は、大きな会場に集まって、プロジェクトの担当者が発表する内容を聞くだけではありません。一日の半分は、講演とそれに続くコイノニアという八人のグループによるディスカッションで構成されています。コイノニアは、同じプロジェクトに参加している者によって構成されています。ですから、講演や発表についてじっくりと話し合うごとに、よく似た問題意識を持った方々との人格的な「交わり」(コイノニア)が深められ、共に神の働きに遣わされている地域や教派において「参与する」(コイノニア)のです。JCE6の「会議」はコイノニアにおいて進められていきますから、だれひとりとしてお客さんとなることはありません。それぞれがプロジェクトのチームの一員となり、働きを担う者となるのです。コイノニアを通して生み出されたネットワークを活用して、情報を共有し、助け合い、祈り合いつつ、宣教のわざに参与するのです。

プロジェクトの具体的働きがそれぞれの地域や教派で進められることをJCE6は目指しています。この具体的働きを進める場がアナロギアです。「アナロギア」とは「相似」という意味のギリシア語です。日本福音同盟(JEA)の六専門委員会、神学、社会、援助協力、女性、宣教、青年と相似のアナロギア委員会をそれぞれの地域や教派で生み出し、そこで宣教協力を進めます。アナロギア委員会を生み出すきっかけは、コイノニアや各プロジェクトごとにもたれるワークショップを通して出会いや、もうすでにそれぞれの地域や教派にある宣教のための委員会でしょう。心動かされ、つなげられた者たちや既存の委員会が各分野のプロジェクトの具体的なわざを、それぞれのところで小さな働きとして進めていき、結果としてアナロギア委員会が生まれ、継続されていくよう願っています。それとともに、JEAの六専門委員会がハブとして働きます。専門委員会を通してアナロギア委員会はさまざまな地域や教派、さらにはアジアや世界の福音的な教会とつながることができます。JEAの理事が各専門委員会の担当者として地域、教派、アジア、世界をつなげる働きを支えることをはじめています。そして、「宣教協力とそのインフラ造り」プロジェクトの大切な目標のひとつは、アナロギアを通してプロジェクトの働きを全国展開していくという仕組みをしっかりと組み立てていくことです。
開催地の神戸では、二年以上前から六つの神戸アナロギア委員会を始めています。神戸社会アナロギア委員会は「社会」の分野に関連する「教会と国家」や「持続可能な社会の構築」という二つのプロジェクトと連絡を取りながら、宣教協力としての研究会を何度も開催しています。神戸青年アナロギア委員会は、「青年宣教」プロジェクトやJEAの青年委員会と連携して、セミナーや青年集会を進めてきています。それぞれのアナロギア委員会が自立しつつ、JEAの専門委員会や他の地域や各教派の働きと連携していこうとしています。同じことが、あなたの地域や教派で始めることができます。
プロジェクトに加わり、コイノニアで交わり、ワークショップで全国展開のために紡ぎ合わされ、具体的な宣教協力がアナロギア委員会という形でつながり、地域と教派に根ざして共に働き、日本と世界の宣教が進められる。そんな幻をJCE6は見ています。参加型、継続型、プロセス重視型の宣教協力こそ「再生へのRe-VISION」の具体的な形です。

宣教協力の推進を支えてくださるのが、講師のクリストファー・ライト氏です。ジョン・ストット氏の後継者として、出版、奨学金、説教セミナーを通して世界の福音的教会と神学校に仕えるランハム・パートナーシップの国際総主事として働いておられます。二〇一〇年の第三回ローザンヌ世界宣教会議では神学部門長として『ケープタウン決意表明』(邦訳出版)の主筆でしたし、邦訳全三巻が出版される『神の宣教』の著者です。JCE6のテーマに添った、「再生へのRe-VISION」「福音」「世界」「可能性」と題する四回の聖書講解をしてくださいます。テーマと講演が一体化していますから、相乗効果が生み出されてくるでしょう。『ケープタウン決意表明』を出版したローザンヌ運動は、影響力のある宣教の働き手を結び合わせることを使命としており、個人参加が中心です。そこで培われている世界宣教のスピリットが、ライト氏の講演を通して、日本における宣教協力という組織的な動きの中でも生かされていくことを大いに期待しています。
これらの他に分科会や夜の集会(青年宣教従事者の交わり、世界宣教の夕べ、神戸の名所でのディナー、個人伝道シンポジウム、ライト氏の英語講演〔同時通訳あり〕)と見どころがたくさんあります。会議直後に青年大会や在外日本語宣教従事者の集いも持たれます。JCE6を通して、参加者一人ひとりが福音の素晴らしさを知り、宣教の渦に巻き込まれ、紡ぎ合わされ、遣わされ、継続して働きが進んでいくことを心から願っています。