DVD 試写室◆ DVD評 あの勝海舟が、あの西郷隆盛が、聖書の影響を受けていた!
「聖書を読んだサムライたち ―龍馬をめぐる五人の男たち―」前編

「聖書を読んだサムライたち」
大橋由享
友愛グループ イエス・キリスト ファミリー教会牧師

「天は人も我も同一に愛し給ふゆゑ、我を愛する心を以て人を愛する也」
「彼はキリスト教徒ではなかったが、彼以上にナザレ人イエスの人格を備えた人を、いまだかつて見たことがない」
これらは、幕末維新史において、大きな足跡を残した二人の人物に関連することばだ。だれに関するものかおわかりであろうか?
 前者は『南州翁遺訓』での西郷隆盛の教え、後者は、静岡教練所教師エドワード・クラークが、親交のあった勝海舟を評して述べたことばである。
長く鎖国を続けてきた日本に、開国と共に西欧諸国から最新の知識と技術がなだれ込んできた。同時にキリスト教ももたらされ、多くの日本人が影響を受けたのだが、その中に勝海舟と西郷隆盛がいたのである。
今回ご紹介するDVDは、「聖書を読んだサムライたち ―龍馬をめぐる五人の男たち―」。坂本龍馬とゆかりのある5人の男たちを取り上げ、どのようにキリスト教の影響を受けたのかを検証する作品である。
第一章は、勝海舟のライフストーリー。勝が初めてキリスト教に出会ったのは、長崎海軍練習所において。教官のカッテンディーケが敬虔なクリスチャンだったのだ。勝は彼から大きな影響を受け、キリスト教に深い理解を示すようになる。後に、禁教を続ける明治政府に対して、キリスト教を黙認するよう意見書を提出している。また、弾圧の厳しい時代に、礼拝堂の建設や布教にも寛容な姿勢を示したため、宣教師たちに非常に感謝されている。
第二章で取り上げた西郷隆盛は、勝海舟以上にキリスト教の影響を受けた人物である。西郷は西洋人を理解するために聖書研究を開始。大きな感化を受けるようになる。鹿児島の西郷南洲顕彰館館長である高栁氏は、「西郷自身が聖書を教えていたという言い伝えもあります。晩年は、間違いなく信じていたでしょう」と語っている。有名な、「敬天愛人」という西郷の座右の銘も、冒頭に紹介した彼の教えも、彼の信仰を証明していると言えるだろう。また、西郷は降伏した相手に対して、非常に寛大な処置をとることで知られている。これは、「汝の敵を愛せよ」という聖書の教えの実践だったのではないだろうか。
それにしても、幕末維新の中心的人物である勝海舟と西郷隆盛が聖書の感化を強く受け、それを実践していたとは、信仰者にとってなんとも誇らしいことではないか! 
次回は同作品の中から残りの3人のサムライについてご紹介したいと思う。