神と人に愛される物語をつむぐ

小松原 宏子児童文学者

昨年末にいのちのことば社から出版して頂いた『親子で楽しむベッドタイム・ストーリー』は、物語の中に聖書のエピソードや祈りをふんだんに取り入れることができました。森の図書館の規則を守らない利用者を許してしまうふくろう館長に腹を立てて、とうごまの木の下に座り込んでしまう貸出係のアライグマ、勝手に牧場を出ていく子羊をさがしにいく牧羊犬、エレベーターに先に乗ると降りるのが最後になってしまい「あとの者が先になる」女の子…。聖書に親しんでいる読者にクスっと笑ってもらえるようなモチーフを盛り込むことができて、自分の中でもクリスチャンの本領発揮となったような一冊でした。けれども、ふり返れば、一般の出版社からの作品の中でも、やはりそこにはクリスチャンとしての自分がいる、と思うことがよくあります。というよりは、いつもそうだったのだということに気づかされます。
処女作『いい夢ひとつおあずかり』(くもん出版)は、夢をあずかる夢銀行をひらくバクが主人公の話です。ここでは、「幸せ」「不幸せ」は人がそう感じるだけで、実際に「幸せなこと」「不幸なこと」というものはないのだというメッセージを伝えています。また、同じように「ほんとうに悪い人」という人もいなくて、心のすきまに悪い息をふきこまれているだけなのだということも。
『ホテルやまのなか小学校』(PHP研究所)とその続編は、廃校になった小学校を卒業生がホテルにする話です。客室は「二年一組」などの教室、調理場は給食室、スイートルームは保健室、露天風呂は元プール…。お客さんは図書室で自由に本を読んだり音楽室で楽器を演奏したりして、学校ホテル生活を楽しみます。けれども、このお客さんたちは、実は心に闇を抱えていました。小学生のときにいろいろなかたちで学校に「わすれもの」をしたおとなが、招かれるようにしてこのホテルにやってきます。そして、自分たちが失っていたものを取り返しながら、ほんとうは「失っていた」わけではないことに気づく物語です。
『時計がない!』(文研出版)は、全世界の時計がすべて消えたら時間はどうなるのか、というSFファンタジー。ここでは、「時」というもののふしぎさと魅力がモチーフになっています。『キューピー・キューティー・キューピッド』(静山社)は、キューピー人形のなかにいる天使キューピッドのお話ですが、ここでは「愛」がテーマです。現在刊行中の『青空小学校いろいろ委員会』(ほるぷ出版)は、保健委員、飼育委員といったクラス委員が活躍する学校ものですが、この中では「仕事を楽しむ」「責任をもつ」ということを初めて経験する子供たちを通して、エンタメの中にも「ミッション」の概念を伝えられたらと思っています。
こういったことを、書く前や書いている時に意識したことはありません。私は最初にストーリーを決めて書くのではなく、物語を書きながら、主人公が動き始めるのを追うようにして書き進めるタイプです。書き始めた時は、話の結末がどうなるか、自分自身にもわからないのです。それだけに、書きあがったときは、いつでも「神さまに書かせていただいた」という恵みを感じます。これからも、感謝の気もちを忘れず、神と人とに愛される物語をつむいでいきたいと思っています。