絶望の人生に、福音の希望

 ◆海外からの文書伝道レポートを紹介します

EHCベネズエラでの証し

 使徒パウロがダマスコ途上で経験したように、シモンとアントネラもまた、人生を変える力強いイエスとの出会いを経験しました。
 ある日、激しい口論の末、シモンはバスルームに閉じこもりました。ドアを閉め、鍵をかける音を聞きながら、アントネラは、シモンが投げつけて壊した物の破片が散らばる床を慎重に歩き、自分の部屋へ向かいました。そして祈り始めたのです。もはや、ほかに頼るものがなかったからでした。ベネズエラの多くの若者と同じように、アントネラも幼い頃は教会に通っていました。しかし、ヒットマン(殺し屋)として生きるシモンと恋に落ちたことで、次第に信仰から離れていきました。
 シモンの危険な仕事は、アントネラを暴力と恐怖の世界へ引き込みました。「いつかシモンが殺されるのではないか」という不安は、彼女の心に重くのしかかっていました。第一子が生まれてからは、その恐れはいっそう強くなりました。その夜、一人になったアントネラは、幼い頃に耳にしていたものの、本当には知らなかった神に向かって祈りました。「私は恐怖でいっぱいでした」とアントネラは振り返ります。
 「シモンが私を傷つけるのではないかとおびえていました。真夜中まで泣き続けました。でもその時、神の平安が私の心に満ちたのです。その瞬間から、私は神の臨在を感じ始め、自由を経験しました」
 その頃、神はすでにシモンの人生にも働いておられました。地域のクリスチャンの一人が、シモンと仲間たちの集まる場所でイエスの愛を語り始めていたのです。
 その後まもなく、EHCベネズエラの訓練を受けたクリスチャンたちがシモンの家を訪れました。
 「彼らが福音を語る中で、超自然的な出来事が起こり、シモンとアントネラは神の臨在を感じました」と、EHCベネズエラのミニストリー・ディレクター、フアン・カルロスは語ります。
 会話の中では、神だけが知っているはずの夫婦の問題が言い当てられました。その夜、二人はイエス・キリストを救い主として受け入れ、EHCの「ディスカバリー・メソッド」を用いた弟子訓練グループに参加し始めました。そして二人の人生は、日ごとに変えられていったのです。
 ある日、アントネラはシモンに言いました。
 「シモン、これからどのように生きるのか決めなければならないわ。神様に仕えるのか、それとも悪魔に仕えるのか」
 真の自由、そして永遠に続く自由を与えることができるのはイエスだけでした。しかしイエスに従うためには、シモンは危険な仕事と過去の生き方を捨てなければなりませんでした。シモンはためらうことなく答えました。
 「私たちは神様に仕える」
 こうしてシモンとアントネラは家族で新しい町へ移り住みました。そして今では教会のリーダーとして、犯罪や暴力からの解放を求める人々に仕えています。
 「ですから、だれでもキリストのうちにあるなら、その人は新しく造られた者です。古いものは過ぎ去って、見よ、すべてが新しくなりました」(Ⅱコリント5:17)

EHCコンゴ民主共和国での証し

 「お前なんか生まれてこなければよかった」
 父親がアリマシに向けて放ったこのことばは、長い間、彼女のアイデンティティを縛り続けました。
 アリマシは、自分が父親から望まれていなかったことを知っていました。彼女が生まれる前、父親は母親に中絶を迫ったのです。「私は拒絶の中に生まれました」とアリマシは綴っています。
 「父に抱きしめられた記憶は一度もありません。父はいつも、私はいらない子だと言っていました。私は自分を重荷のように感じていました」
 学校では懸命に勉強しましたが、どこにも居場所がないように感じていました。
 「実の父親から『生まれてこなければよかった』と思われている自分を、誰が友だちとして受け入れてくれるだろうか」
 そう考えたアリマシは、目立たないよう静かに過ごしていました。しかし、傷ついた心の奥では、少しずつ怒りが育っていきました。
 「誰も私を必要としてくれないのに、なぜ神は私を生まれさせたのだろう、とずっと考えていました」
 17歳のとき、父親は家を出て行きました。そしてアリマシと母親への生活費の援助も打ち切ったのです。やがて父親が別の家庭を築いたといううわさが耳に入りました。愛されなかっただけでなく、見捨てられた。その二重の痛みは、彼女の心を深く傷つけました。
 父親の支えを失ったことで、アリマシと母親の生活はさらに苦しくなりました。大学に進学することが将来を切り開く道だと分かっていましたが、学費を工面することはますます困難になっていきました。
 やがて彼女は、「自分のいのちに価値などあるのだろうか」と思い悩むようになりました。
 そんなある日、学校からの帰り道で、路上伝道をしていたEHCの宣教チームと出会いました。
 その中の一人が、アリマシに『あなたはどこにいるのですか』という福音冊子を手渡しました。「私は立ち止まりました」とアリマシは語ります。
 「これまでずっと『なぜ私は生まれてきたの?』と問い続けていました。でもその時は、神様が『その苦しみの中で、あなたはどこにいるのか。その拒絶の中で、あなたはどこにいるのか』と問いかけてくださっているように感じたのです」
 冊子には、神はすべての物語が始まる前からそれを知っておられ、一人ひとりのいのちを尊いものとして見ておられることが記されていました。アリマシはその場に崩れ落ち、これまで経験したことのないほど激しく涙を流しました。
 「父が私を望まなかったとしても、神様は私を望んでくださっている。そのことを初めて理解したのです」
 数日後、彼女は教会へ招かれ、「キリストのうちにある真のアイデンティティ」というメッセージを聞きました。
 「その日、私はイエス・キリストに人生を捧げる決心をしました。そして怒りを手放し、父を赦すことを選びました。赦したからといって過去が消えるわけではありません。でも私の心は癒やされました」
 今、アリマシは学業に励みながら弟子訓練のための聖書の学びにも積極的に参加し、母親を支えています。
 「私はもう、自分を『拒絶された子ども』だとは思いません。私は神様に選ばれた存在です。今は自信を持って歩んでいます。私の誕生は間違いではなく、神様の聖なる目的によるものだと知っているからです」