点字競技会

福音点字情報センター協力委員矢板ホーリネス教会牧師
田中敏信

私が中学3年生の時です。朝の授業の1時間目。みんな、緊張した面持ちで席に着きます。机の上には、点字を書く紙をセットした点字器。点字を書く器具、点筆を握って。そこに、校内放送の先生の声。「50音、速書き。1分間。用意、始め!」 みんな一斉に、あいうえおかきくけこさしすせそ…を、点字でタタタタタタと書きます。30秒くらいで腕が重くなり、40秒を超えると、腕の筋肉がつり始めます。「5秒前!…終わり!」 みな息をつきます。腕の筋肉をもみほぐしていると、次のアナウンス。「『め』書き。1分間。用意、始め!」 タタタタタタ。ご参考までに、点字の1文字は6個の点から成っていて、6点全部打つと「め」の文字になります。最初は速く打てますが、50秒を過ぎるとポツン、ポツン…。ふう。次は聞き書き。読み上げられる文章を点字で書き取る種目。最後は、転写。点字の文章を左手で読み、右手で点字で書きます。
午後には結果の発表。点字の読み書きを正確に、しかも速く。各種目の優勝者や、全体の優勝者が発表されます。確か、体育館に集まっての表彰だったと思います。それで私の成績は? もちろん優勝の経験はありません。小学校1年生から点字を使い始めたクラスメートは、めっちゃ速いのです。書くのも読むのも、私の3倍の速さ。もう1つ「速読み」という種目もありました。渡された点字の本の1ページを、担当の先生の前で読み上げます。伝説の先輩は、指で読み取るのが速すぎて、読み上げるのに舌が回らなかったとか…。
私も頑張った点字競技会。高校3年の頃には、親友と闘志を燃やし合って、上位近くに食い込んだ記憶。こうして、点字は私の文字になりました。そしてこの点字で、後に私は聖書を読むのです。
「一つのことは知っています。私は盲目であったのに、今は見えるということです」(ヨハネ9:25)