EHCパプアニューギニア 地の果てに住む人々へ福音を

◆海外からの文書伝道レポートを紹介します。


ワビ・スミ村近くの家族。家屋の前で
 人口840万人のパプアニューギニアには、数百もの部族と825を超える言語が存在します。部族の違いという壁が、福音伝道のときだけでなく日常的に存在し、時に衝突が起こります。EHCディレクターの住む地域では、ある盗難事件を発端に部族間での殺し合いが起こったこともありました。
また、パプアニューギニアは世界でも都市化が進んでいない国の一つです。都市部の人口は全体の約15%にすぎず、 大多数は田舎の村落で、かやぶきの小屋を住居とし、農業を営んで自給自足の生活をしています。道路や電気などの生活インフラは十分に整備されていません。EHCの開拓宣教者やスタッフたちが、教会の設置や宣教が及んでいない地域へ向かうためには、山を登り、濁流の川を渡り、時にはワニが生息する水場を歩かなければなりません。

数多くの部族に広がる福音


 サザン・ハイランズという州では、オイコス計画が急速に進み、さまざまなチームが共に宣教活動に取り組んでいます。オイコス計画への参加が宣教への大きな動機づけとなり、自分たちで福音を届ける地域を選び、それぞれの賜物を生かしながら活動しているチームもあります。このような宣教地の村でも、ある部族が近隣の部族から些細な侮辱を受けたことが紛争に発展し、何百人もの若者の命が奪われたことがありました。この州では、若い男性が農作業用の「なた」を持ち歩く姿がよく見られますが、それは仕事のためではなく、武器として持ち歩いているのです。
 ワビ・スミと呼ばれる小さな村の牧師たちは、経歴はさまざまですが、全員がオイコス計画に情熱をもっています。彼らはこのような人里離れた地域にも福音が根づき、村や人が変えられるのを見たいと心から願っています。
 そのような中、彼らにとって大きな試練となっているのが、「ラスカル」と呼ばれる、窃盗、レイプ、殺人など、ありとあらゆる無法な行為をしている若い男たちのギャング集団の存在です。部族の分裂や紛争、政府の腐敗、不十分な生活インフラ、教育や雇用の不足などを背景として、彼らが幅を利かせているのです。

ギャングから、いのちの使者へ


 しかし最近、その地域のギャングの1人が信仰をもちました。彼は現在、牧師を目指し、オイコス計画にも積極的に取り組んでいます。彼の人生は神様によって変えられました。
 実は、このようにしてギャングから神の働き人に変えられることは珍しくありません。EHCでチームリーダーを務めるベンジャミン・パトラスも、かつてはギャングでした。数年前、まだベンジャミンがギャングの一員だった頃、EHCのスタッフたちは彼の住む地域のギャングたちにアプローチしたいと考えていました。そこで、ディレクターのアロンの提案により、通常はキリストによる救いを体験した人々が行う弟子訓練を、まだ救いに至っていない人を導くために行うことにしたのです。その弟子訓練の宣教の旅に、地域に住む5人の若者が興味を示して参加することになりました。彼らのほとんどが麻薬中毒の軽犯罪者でした。
 参加した5人の世話をしたのは、エリヤというEHCの若いリーダーでした。800㎞離れたカビエンという町までの旅路で、エリヤの信仰や神との関係の深さに触れて、彼らの心は変えられていきました。目的地に到着すると、彼らはEHCが所有する土地で、EHCの地域本部と宣教センターの建設に従事しました。その過程で、参加した5人はエリヤから弟子訓練を受け、そして麻薬中毒から解放され、キリストへの信仰をもったのです。

宣教のために大型の車を用意するEHCチーム
現在、彼らはオイコス計画の宣教チームを導くリーダーになっています。明るく笑顔の絶えないベンジャミンもその一人なのです。神は暴力的な文化や人々を造り変え、神の栄光のために用いられます。

 世界には人種や部族間の壁があちこちに存在し、パプアニューギニアでも例外ではありません。しかし、この国では人種や部族の壁を越えて福音が浸透し始めています。そして、多くの変化が個人のうちに、また社会に起こっています。福音の核心である「赦し」が、これらの壁に力強く働くのです。そして、赦しを得ることで心の中に与えられる新しいいのちが、人々に真実の変化をもたらしていくのです。

● 祈りの課題

・ 新型コロナウイルスの感染が8件※確認されています。この病気に対応できる十分な保健医療施設が国内にありません。主のあわれみによって、この国が守られるようにお祈りください。(※5月末時点)
・ 主要都市周辺の集落に住む人々のためにお祈りくだ
 さい。ほとんどが日毎の収入で生活をしているため、多くの人が政府による緊急事態宣言や移動制限によって仕事ができず、十分な食事をとれていません。
・ ある地域で「和解プログラム」を開催したところ、96人が福音に前向きな反応を示しました。彼らの霊的な飢え渇きが神のことばによって満たされ、信仰をもち、成長するようにお祈りください。

 ―パプアニューギニア―
 人口:840万人 言語:825以上
 クリスチャン:94%(うち、福音派は22.8%) 
 全家庭への宣教目標:2028年
 宣教の目標世帯数:170万世帯
 2019年の宣教世帯数:4万3,016世帯
 2019年に反応があった数:1,172件

(国際EHC機関紙「Every Home」2020年春号より)