ニッチな宣教の始まり

荻野倫夫アッセンブリー・ガリラヤ丸子町キリスト教会 主任牧師、中央福音教会 担任教師、中央聖書神学校 学生主任

2023年、日本のクリスチャン・メタル・バンドである伊万里音色から「日本で最初のヘヴィ・メタル・チャーチを始める。メタル牧師のあなたに説教してもらえないか」と誘われました。ニッチな宣教の始まりです。日本初のヘヴィ・メタル・チャーチ開催2週間前のこと。私の神学校の教え子Y牧師が、サーフィン伝道をしていて、牧師を親に持つものの、長らく教会から離れていたHさんに会います。Y牧師は伝道し、Hさんに洗礼を授けました。そのHさんはメタル好きのドラマーで、Hさんのお姉様もまたメタル・ヴォーカリストでした。ご姉弟でヘヴィ・メタル・チャーチに参加し、共にメガデスというバンドの曲「ホーリー・ウォーズ」をヘヴィ・メタル・チャーチで披露することができました。
第1回ヘヴィ・メタル・チャーチ冒頭、Hさんは、受洗したこと、自分の大好きなメタルを教会で演奏するよう誘われたことを証ししました。Hさんのお父様はすでに召されていますが、長年Hさんの救いのために祈っていたお母様とお姉様は感無量で聞いておられました。私が「ホーリー・ウォーズ」の演奏をイマリ・トーンズに持ちかけたのは2023年10月5日のことです。その二日後、イスラム原理主義武装集団ハマスが、イスラエル領内に向けて数千発のロケット弾を発射し、イスラエルとの軍事衝突がエスカレートしました。「ホーリー・ウォーズ」の歌詞にはこうあります。「宗教のために人を殺すこと 俺には理解できないことだ」。ヘヴィ・メタル・チャーチが、大きな神のご計画の一部であるという恐れとおののきを感じました。第一義的には、ヘヴィ・メタル・チャーチは長髪と刺青の人を天国に送る計画です。しかし副次的に、エルサレムの平和のために祈る(詩篇122:6)ことも、ヘヴィ・メタル・チャーチの使命ではないか、と思わされたのです。福音宣教と社会正義は切っても切り離せないものです。イエス様の宣教がそうであったように。
これまで散発的にヘヴィ・メタル・チャーチは2度にわたって開催されてきました。そして今年の10月11日(土)に、第3回ヘヴィ・メタル・チャーチの開催が決定しています。またすでに12か国で発売中のヘヴィ・メタル・バイブル日本語版の出版を願っています。これは新約聖書と共にアイアン・メイデンやメガデスのメンバーなど、メタルの大御所の救いの証しがついているものです。既存の邦訳聖書に彼らの証しを訳して掲載するか、いっそのこと、独自の翻訳聖書と共に発行するか。他のメタル牧師に、難しい黙示録やルカ文書を訳してもらい協力して、完訳できないかと夢想しています。需要がない? いえ必ずしもメタル好きに限らず、怖いもの見たさや興味本位で手に取ってくれる方がいれば、主は必ず豊かに用いてくださるのではないでしょうか。いっそのこと振り切って、がっつりメタルの流儀にかなった翻訳をした、ワイルドで、チープで、ストレートに心に刺さる神のことばがあってもいいと思っています。

「ジーザスは口を開き、やつらに教えて言った、
『幸いだ、霊の極貧者。
だって天の王国はやつらのものだから』」
(マタイ5:2-3、ヘヴィ・メタル・バイブル試訳)