被災地にひびく良き知らせ

齋藤 満日本同盟基督教団 グレイスハウス教会 牧師

■被災地支援と伝道に導かれて

国際NGOの職員から転職し、東北に遣わされたのは2015年でした。震災から4年経つにもかかわらず、沿岸はまだまだ町の復興の真っ最中。沿岸では家賃も高騰し、私たち家族が住めそうな空き家もありませんでした。私たちはひとまず盛岡に住まいを決め、週日は私だけが仮設住宅などで寝泊まりし、沿岸にある被災地で支援活動と教会開拓のための調査を行いました。
そして2016年に大船渡に拠点を構え、2019年に正式に開拓教会としてグレイスハウス教会を設立しました。そして震災を機にこちらへ移住してきたクリスチャンたちとともに、超少子高齢化社会、宣教困難地でどのように福音を伝えたらいいか、試行錯誤しながら、歩み続けています。

■福音の再発見

被災地に来て最初にぶつかった壁は、クリスチャンとして被災者にどのように接し、どのように福音を語るかでした。津波で家を流され、家族や友を失い、それでも一生懸命頑張っている方々に何と声をかけたらよいのか正直わからなかったのです。彼らの半分も生きていない私が励ましても、神の愛や祝福を語っても、薄っぺらい口先だけのことばになりかねません。ただただ仮設住宅で暮らす人々と向き合い、数千時間、お話を聞かせていただくしかできることはありませんでした。
私は祈り、聖書に向き合いました。たとえ私は役に立たない土の器でも、主はそうではない。聖書はそうではないと信じていました。そして与えられたのが、このみことばです。「永遠のいのちとは、唯一のまことの神であるあなたと、あなたが遣わされたイエス・キリストを知ることです」(ヨハネ17:3)
震災がもたらした最も深刻な被害は、人と人の関係の破壊でした。家を失い、家族を失い、仮設は住み慣れた地域から離れ、抽選で入居先が決められました。その後、災害公営住宅に移るときにも、皆バラバラにされ、自宅を再建した人たちも多くの人が元の場所には戻れませんでした。みな孤独にされたのです。家の再建のために、夜遅くまで共働きになったり、出稼ぎしたりなどの理由で崩壊していく家族を何組も見ました。震災によって起きた二次的な関係の破壊です。
街やインフラは12年経って美しく再建されましたが、人のつながりは、いまだ被災したまま風化していくだけです。被災した人々は癒えない孤独を抱え、諦め、せっかくつながれたいのちの意味を失いかけているのです。
この世に変わらないものはない。壊れないつながりなどない。虚無はそう言います。しかし聖書は、永遠のいのちとは、天国行きの切符のことではなく、私たちを愛してやまない神と、私たちのために喜んで命を投げ出したイエスとの関係だと言います(みことばの「知ること」とは、人格的な交わりを通して経験的に知るという意味のギリシア語が使われている)。そしてこの関係は津波にも、死によってさえも、途切れることがない永遠のつながりなのです。
この神様とのつながり=永遠のいのちをぜひ三陸沿岸の被災地の津々浦々にお知らせしたいと願いつつ、この地で福音の種を蒔き続けていきます。