EHCナミビア とにかく愛する

EHC国際総主事 タナー・ピークより

 私たちが生きるこの世界には、見過ごされ、疎外されている人々が数多く存在します。それは、私たちの都市にいるホームレスや貧困を経験している人々であったり、きれいな水を飲むことのできない子どもたち、また老人ホームで孤独を抱えている高齢者や、性別によって価値が決まる文化圏の女性たちであったりするのです。
 こうした人々やコミュニティが、雑誌の表紙を飾るようなことはあまりありません。そして、疎外された人々へのアプローチは、高コストで時間のかかる作業であり、世界中のチームが何年もかけて取り組む必要があります。率直に言って、費用対効果はよくなく、忘れ去られている人々に手を差し伸べることは、多大な費用や人手を必要とするのです。
 しかし、私たちは、忘れ去られた人々を思い起こし、彼らにキリストを伝えるために必要なことは何でもします。たとえそれが高コストであっても、与えるために来られたイエス様の物語に心を揺さぶられるのです。
 イエス様はすべてを捨ててこの世界に人として来られ、ご自身をささげるために私たちに愛を示されました。150か国以上で活動しているEHCチームは、まさにこのキリストの愛に倣って活動しています。私たちはキリストを模範とし、キリストの愛に動かされ、どんな犠牲を払ってでもキリストの臨在をすべての人、あらゆる場所で伝えようと奮起しているのです。とにかく与え、そして愛する。他の人々や組織が行かないような場所にまで行き、地球上のすべての人がイエス様の福音を聞くことができるように惜しみなく与えるのです。
 忘れ去られた人々に思いを馳せながら、私たちと共に、とにかく与え、愛そうではありませんか。この使命を支援してくださるとき、あなたは忘れられた人々に光をもたらすことになるのです。キリストの福音がすべての人に、どこであっても運ばれていくのを見ることができます。あらゆる場所の、あらゆる世代の、あらゆる人のために。

EHCナミビアからの証し~ミラクルとの出会い~

 「私の旅は2013年のナミビアへの移住から始まりました」とパイダ・マンドゥッゾは語ります。パイダは小児科医で、ナミビアのEHCで奉仕しています。2013年、医学部を卒業したばかりの彼女の将来へのビジョンは、現実的であると同時に希望に満ちていました。
 「私はいつも子どもたちの健康に情熱を持っていましたし、地方病院で働いたことで、多くの病弱な子どもたちと接することができました」とパイダは続けます。
 パイダは子どもたちとその家族をケアするうちに、彼らの人生や生活の状況を知るようになりました。「多くの子どもたちがただの患者でなくなりました。私の患者の多くは、母子家庭の子どもたちでした。ひとり親が子どもたちの基本的な必要を満たしてあげることはとても難しいことなのです」
 パイダが出会った親たちの多くは、栄養や幼児のケアに関する基本的な教育を受けていませんでした。そこでパイダは、祈りと礼拝から始まる教育プログラムを小児科病棟で開催し、週末には両親や介護職員と1対1で学び会をするようになったのです。その結果、多くの人々が人生をイエス様にささげることになりました。
 パイダは、自分が変化をもたらしていることに勇気づけられましたが、それ以上に大きな転機となったのはミラクルとの出会いでした。ミラクルは出産時に外傷を負い、脳性麻痺と診断されました。彼は幼少期のほとんどを入退院を繰り返しながら病院の中で過ごしました。

 子どもの命を救う戦いの中では、その子の両親のことを忘れてしまいがちです。「ミラクルの母親が常に病院に通い、精神的な重荷を背負っているのを見て、私たちはお互いの距離を縮めました」とパイダは語ります。「毎月ミラクルは脳性麻痺のクリニックに通い、発達の遅れを取り戻そうとしていました。ある月曜日、私は脳性麻痺患者の多さと症状の深刻さに驚かされました。多くの母親が体をコントロールしたり、コミュニケーションを取るのが難しい子どもを抱えているのです。このような親の多くは、わが子の状態を非難され、責められることに耐えています(アフリカの一部の文化では、障害をもって生まれた子どもは呪いや罰とさえ見なされています)」
 パイダは、地域社会から拒絶され、子どもたちを治療する医師からも忘れられている親たち、つまり社会から見過ごされている人々を見ました。その疲れ果てた心を目の当たりにして、彼らに対するイエス様のあわみ、そして愛が心に湧き上がったのです。
 「物理的な必要だけでなく、精神的な必要についても考えさせられました」とパイダは言います。「私はこの必要をEHCのリーダーたちに伝えました。そして、支援活動のために集まった寄付やサポートのおかげで、脳性麻痺の子どもたちの両親を対象とした初めてのセミナーを病院で開催することができました。医学的に正すべきアフリカ神話がたくさんありました」
 パイダが謎と恥に包まれていたものに真理の光を当てると、聴衆の心は福音に向かって開かれたのでした。「多くの人が自分の気持ちを打ち明け、やがてキリストにある平安を見出すのを見るのは、なんという喜びでしょう。EHCからの支援によって、両親は背負っていた重荷や罪悪感から解放されたのです。彼らは子どもたちのために祈る方法を学び、30世帯が食料や物資の入ったバスケットを受け取りました」
 セミナーの後、パイダは協力してくれる地元の銀行や企業を募り、脳性麻痺患者とその両親への支援活動を継続し、生活必需品、聖書、教材を提供しています。「ミラクルや他の多くの語られることのなかった子どもたちが、希望を持って生きています。私たちは、このミニストリーを通して、神様の愛が彼らに注がれているのを目の当たりにしています」