美術を通して宣教を

町田俊之(バイブル・アンド・アートミニストリーズ代表 富士見聖書教会牧師)

 私は美術大学の2年生の時に、英語の先生としてアメリカ人宣教師と出会い、それがきっかけで生まれて初めて教会に行くようになりました。大学入学の年に友人の才能に妬みを感じていた私は、教会で開かれた聖書のことばを通して、その妬みこそ神の前の罪であることを自覚し、その場でイエス・キリストを救い主と信じました。
 私はそれまでキリスト教との接点がまったくありませんでしたので、自分が信じたことに大きな衝撃を受けて、「自分は日本人として初めてクリスチャンになったのだ」との思いをもちました。その時、私の頭には二つの地図が浮かびました。一つは世界地図であり、この2千年間を通してイエスの福音が世界中を巡って今、自分のところにきたのだ、ということ。もう一つは日本地図で、これから自分がイエスの福音を伝えていくべき地である、ということでした。しかし、自分が今まで大学で学んできた美術はどうなるのかとの不安もよぎりました。神は目に見えない方であり、美術は目に見えなければ成り立たないものである…その相反する性質が、私の人生最大の疑問になりました。
 美大を卒業後、親の猛反対ですぐには神学校には行けず、デザイン事務所で2年間勤務した後、神学校で学び、卒業後は牧師として11年間務めました。
 牧会して数年後、近郊の教会で美術に関心のあるクリスチャンに出会いました。教会では音楽はよく用いられているのに、美術はほとんど語られていないこと、また宗教改革の後遺症からか、美術は偶像になる危険があるとのことで、彼らも神と美術との関係で悩んでいました。
 そこで、彼らと一緒に「美術」をテーマにして聖書研究会を始めたのです。その学びの中で、天地創造で神は美しい世界を造られたことや、幕屋のデザインは神が指示されて、主を信じるイスラエルの子らに美術的な たまもの賜物を与えていることを知りました。私は次第に、神と美術とは深い関係があることを理解できるようになり、ついに美術を通して宣教する団体の創設に踏み切ることができました。信仰が与えられて22年目のことです。 
 現在の私は、美術に関心があり、また美術が教会でも用いられたく願っている人たちと共に、毎年美術展を開催したり、キリスト教美術の講演、セミナーなどを通して全国の教会で福音を語っています。また、自分の思いを超えて多くのキリスト教美術の書籍に関わることができ、信じた時に頭に浮かんだ日本地図が少しずつ実現していることに驚いています。
 私は、神が私たち人間に美術という賜物を与えてくださったことを信じます。神が与えてくださったがゆえに、「美術」が決して神格化されてはならず、また、決して蔑まれてもならないことを確信しています。そして聖書は、イエス・キリストこそ、目に見えないお方でありながら、目に見えるお方となられたことを私たちに証言しているのです。