358 時代を見る眼 「イスラエル・ハマス戦争」を視点を変えて視る〔1〕 イスラエルとイラン

イスラエル政府観光省公認ガイド
柿内 ルツ

 

イスラエル・パレスチナ紛争において、つねに問題となるのが、聖書の預言的解釈と、人道的視点との衝突です。そこで少し視点を変え、背後の国際的動きを視てみましょう。
今年4月14日イランから1800キロ以上離れたイスラエルへ、史上初となる直接的な弾道ミサイル攻撃がありました。この2週間前にシリアのダマスカスにあるイラン領事館の別館が空爆されたことへの報復です。夜空の流れ星のように光る空中戦の映像を見ながら、私はイスラエル行きを心密かに決めた1991年冬を思い出しました。イラクからイスラエルへスカッドミサイルが飛ばされた湾岸戦争でした。この2年後、聖書の世界を学ぶためイスラエルへ渡り、聖書地理、歴史、考古学などにはまりました。イスラエル・パレスチナ問題には関わらないほうが良いとの現地の方々の助言で、できるだけ避けてきましたが、何が起きているか知りたいとの日本の声は多く、この問題を避けて通れないのも事実です。
イランは1979年のイスラム革命による国交断絶までは、イスラエルと協力関係にありました。王政倒壊以降、イスラム教原理主義のシーア派が政権を握り、反イスラエルを宣言。両国は表面下で闘い続けることとなりました。イスラエルはイランの核開発を警戒し、サイバー攻撃を主とするあらゆる手段を講じました。
昨年10月のハマスによるイスラエル奇襲攻撃に乗じ、レバノン南部のシーア派武装組織ヒズボラがイスラエル北部へ大規模なミサイル攻撃をしています。ヒズボラの後方支援をしているのがイラン保守強硬派の革命防衛隊です。中でも精鋭のコッズ部隊が、ダマスカスにあるイラン大使館に司令拠点を置いていました。
さらにイランは、イスラエルやパレスチナとは関係のなかったイエメン反政府武装組織のフーシ派を、イラン・シーア派主導の「抵抗の枢軸」(※1)へ取り込み、「パレスチナの大義」を掲げれば何でも許されるかのように、紅海沖での海賊活動を活発化させています。
パレスチナのイスラム教徒はスンニー派で、イランのシーア派とは一線を画します。しかし高官レベルでの個人交流は深く、イランはガザ武装組織のハマスやイスラミック・ジハード(※2)への資金援助、武器供給、武装訓練をしてきました。近年は次々とイスラエルと周辺のスンニー派アラブ諸国で「アブラハム和平合意」が結ばれ、イスラエルへ歩み寄る姿勢が、ハマスやイランの危機感を募らせることとなりました。

※1 中東各地でイランが支援する武装組織ネットワーク
※2 イスラム聖戦