書評Books 福音によって変革され続ける存在として

単立 上野の森キリスト教会 主任牧師 重田稔仁

『キリストのうちにある生活―日本と欧米の対話の向こうに』
ジェームズ・フーストン 著
高橋秀典 監修

B6判 1,400円+税
いのちのことば社

『キリストのうちにある生活』の序文で筆者ジェームズ・フーストンは、本書を通じて日本と欧米のクリスチャンの対話を目指していると謳っている。それは流動的なグローバル化が進む世界でキリストにあって新しいアイデンティティーを見いだした者は、その属する民族の独自性を堅持しつつ、福音によって変革され続ける存在として、それまでとは違った生き方をするべく召されているとの彼の神学的直観による。
フーストンが啓発する〝それまでとは違った生き方〟、つまり福音によって変革され続けるキリスト者の在り方とは、まさにこの本の表題にある「キリストのうちにある生活」だ。 フーストンは「キリストのうちにある生活」の本質について第四章で詳細に解き明かしている。
それは行き場の定まらない〝私たちの感情”がキリストによって啓示された〝神の私たちに向けられた感情”と結ばれ、贖われることだと。その結果、私たちはキリストにあって自らのアイデンティティーを〝他者のために存在する者”として自覚するようになると。クリスチャンは「旅人ではなく巡礼者である」と信じるフーストンは、〝キリストのうちにある者の喜び”を分かち合うべくこれまで六度の来日を果たし、日本のクリスチャンを慰め励ましてきた。
それは私たち日本人クリスチャンが、キリストによって新しく造られた者として他者のために生きるべく、互いに仕え、愛し合ってほしいと願う彼自身の〝贖われた感情”の賜物だ。フーストンは日本人の精神性、社会性、宗教性、文化、歴史について幅広く文献を手にするかたわら、多くの日本人との継続的な交流を通じて日本人理解の洞察を深めてきたと本書で証ししている。
彼の日本人クリスチャンに寄せるキリストにある兄弟愛に裏打ちされた本書を手にして今、改めて、私自身の感情が神の感情に結ばれ、贖われ、私の生き方が変革され続けることを切望してやまない。