書評Books もうひとつのちいろば

『 ちいろばの女房 』

四六判 1,200円+税
フォレストブックス

日本基督教団西川口教会 牧師 金田佐久子
一気に読んでしまいました。著者は、「ちいろば牧師」で知られている榎本保郎先生のお連れ合いの榎本和子さん。筆者は現在、和子さんとアシュラム(聖書の言葉への徹底した聴従を実践する運動)の祈りの友とならせていただいています。本書は、和子さんが九十歳を迎える記念として、昨年の年頭アシュラムでの証しをもとに出版されました。
「第一章 父母と共に」には、和子さんの実家である野村家の信仰のルーツやご家族について、心からの愛情を込めて紹介されています。特にお父様(野村国一さん)が印象に残りました。時代に流されず、筋の通った信仰者であるお父様に洗礼者ヨハネを連想させられました。著者が通っていた淡路島・福良の教会に来始めていた青年・榎本保郎は、自分のために真摯に祈ってくれたこの野村氏によってキリスト教を見直し、教会に留まることができたのでした。
「第二章 夫と共に」は、夫である榎本保郎との二十八年の結婚生活の証しです。まことにすさまじい出来事の記録です。なぜなら、保郎は神と相談したことは決して覆すことなく、自身が痛んでも、家族が傷ついても、神の招きに命をかけていく人だったからです。その夫に従い、共にした苦労と喜びが記されています。保郎は教会を辞して、アシュラムに専従することを決意します。しかしアシュラムセンターの働きを始めて二年後の一九七七年七月に、保郎は病のため神のみもとに召されます。まだ五十二歳でした。
「第三章 神が共に」は、夫の死から今日までの恵みの分かち合いです。ご長男は夫の亡くなる直前にアシュラムへの思いと伝道者への思いが与えられましたが、成人してからは違った道に行ってしまいました。それが実現するまで実に三十年。現在ご長男の榎本恵先生は、アシュラムセンター主幹牧師としてご奉仕されています。この約束の実現に神の真実を見ます。本書は、和子さんがイエス様に精いっぱい従う「もうひとつのちいろば」として生かされた証しの書です。