CD Review ◆ CD評 『AIR』

「AIR」
金本悟
日本福音同盟 青年委員会担当理事
練馬神の教会牧師

共に生かされて良かった

 「ジェニグレ」の「AIR」を聴いた。ひとつのメッセージを聞き取った。それは、現代という機械音の満ちている世界に対して、体当たりをして「生かされていることは素晴らしいことだよ」とぶつける若者たちのメッセージである。

 人の声も、機械の音も、みな、無機質な一つの音として扱い、ムンクの「叫び」のように不安と焦燥感に襲われ耳を覆いたくなるような世界が広がっている現代には、種々な人々がさまよっている。若者もいれば、皮相なインテレクチュアルな人もいる。ノン・クリスチャンもいれば、クリスチャンでさまよい込んでいる人もいる。その人々に対して、体全体をぶつけて、クリスチャンとして生きていて「良かった!」と叫んでいる声がある。あなたもこの現代の機械音の満ちている世界にあって、人のメッセージや神のメッセージを真剣に聴きながら生きようよという魂の叫びが聞こえてくる。

 「ジェニグレ」の「AIR」は、私にとって聴きやすい音楽では決してない。それを求めるなら、「ヒーリングミュージック」の方が良い。この「AIR」を聴くと、ふだん自分が関わりを持たない世界に気づく。その世界にあって、真剣に「神様の真実な恵みの中で生きようよ」と叫ぶ人々がいる。改めて、自分の生き方が自分の世界の中だけに閉塞的になっていないか、自分と関わりがあるけれど知らないふりをしたり、関わりを持たないですましている世界があったりして、それでよいのだろうかというメッセージまで伝えてしまう不思議なCDである。

 若い人たちには直接にメッセージが伝わるだろう。中堅の牧師には若者との対話のためにも聴いて欲しい。私の父の世代の方々には、生かされていることの難しさと喜びを共に味わって欲しい。つまりどんな世代の人にも一度は触れて欲しいCDである。ある人ははまり、ある人は反発するだろう。でも、どんなところでも主の証しが続けられているという確かな手応えを感じさせてくれるのが「AIR」である。