CD Review ◆ CD評 『マイポートレートⅡ』

「マイポートレートⅡ」
岩松康宣
日本福音キリスト教会連合 菅キリスト教会牧師

団塊の世代を越えて多くの人の心に届くメッセージ

 一九七〇年、「秋でもないのに」でデビューし、透明感のあるさわやかな歌声で多くのファンを持っていた本田路津子が、一九八四年、今度はゴスペルシンガーとして私たちの目の前に現れた。しかしそれは驚きというよりも、必然であるかのような印象を私は持った。その理由は、心を洗ってくれるような彼女の歌声にあったのかもしれない。

 それから二〇周年の今年、懐かしいフォークソングと賛美の歌を織り交ぜた「マイポートレート―足跡― 」をリリースした。収録曲の「風」「悲しくてやりきれない」「ひとりの小さな手」「ドナドナ」などは、フォークソング全盛時代に青春を送った者たちを、あの時代にタイムスリップさせてくれる。

 しかし、実際にこれらの曲が収録されたアルバムを聴いてみると、「懐メロ」的な懐かしさよりは、本田路津子の「現在」を感じさせてくれるものに仕上がっている。私には、彼女自身の歌による信仰告白のように思えた。

 デビュー当時のアルバム「本田路津子・秋でもないのに」には、「人は誰もが思い出をほしがり、大切にするでしょう」というご本人の言葉が添えられていたが、今回のアルバムには思い出とともに、彼女のそばにいつもあった「もうひとつの足跡」が添えられている。アルバムの歌詞カードのひとつひとつに添えられている彼女自身の短いコメントがいい。それを読んだ後に再びアルバムを聴いて見ると、本田路津子が多くの人に届けたいメッセージが伝わってくる。

 収録曲のひとつ「父の涙」は岩渕まこと氏の曲で、若い人に人気のある曲だが、歌い方によっては、情緒的に流れてしまいやすい難しい曲でもある。しかし、やさしさと深みを増した彼女の歌声で聞くと、歌詞が心の中にスーッと入って来る。気がつくと自分も口ずさんでいた。収録曲の最後にある「たとえば私が」は、聴く一人ひとりにも、「もうひとつの足跡」があったことを気づかせてくれる曲だ。

 団塊の世代を越えて多くの人の心に届くメッセージがこのアルバムにはある。