21世紀の伝道を考える 13 ビジネスマン伝道(1)

黒田 禎一郎
ミッション 宣教の声 主幹牧師

 バブル経済の崩壊以来、ますます混迷を深める日本社会にあって、今ビジネスマンはどのような状況のもとに置かれているのでしょうか。また教会、そして私たちクリスチャンは、一体何をするべきなのでしょうか。

 会社信仰の崩壊

 長引く不景気とこれまでの日本特有の経済社会構図が崩れたことによって、護送船団方式という社会構図は昔の話となりました。従来の価値観・態度・行動パターンでは、もう乗り越えられない壁にぶつかっています。どれだけ頑張っても会社内で自分の居場所を確保することが、困難になってきました。多くの人々は努力してもポストはなく、給料が上がる保証もなく、いつリストラになるのかという不安をかかえています。倒産・失業率の増加は、さらに不安に拍車をかけています。

 そうした社会変化の中で、これまでの会社信仰ともいえる会社への忠誠心は消えつつあります。そこで人は心の拠り所を求めています。一体、真に頼れるものはどこにあるのか、今多くの企業人とビジネスマンが模索しています。

 個人主義的傾向

 これまでのように会社中心との画一化したビジネススタイルでは、国際競争に対応することができず、また国際間で求められるグローバルスタンダードも通用しません。そこで多くの人々が、結局は自分だ、という個人主義的思考に移行しつつあります。会社や他人を信じられなくなった今、このような個人思考はますます増大することでしょう。しかし、裏返せば心の空虚さを示しています。

 極端な場合、自分が信じられなくなったとき、あるいは自分に自信を失うとき、自分の行き場所がなくなります。昨今の自殺者数は、不慮の交通事故による死者数より多いのです。しかもその自殺者の多くは、中年・壮年層であるとはショッキングなレポートではないでしょうか。これは憂うべき現実です。

 現代ビジネスマン

 このような時代と社会で戦っているビジネス戦士に、私は次の三つの特徴が見られると考えています。

 第一に、疲労しているということです。ストレス過剰の日本社会で、多くの人々は蓄積疲労を抱えています。仕事を一生懸命し、何とかして成績向上を願う働き人には相当の負担がかかっています。肉体的疲労と精神的疲労からくる疲れは、ビジネスマンを苦しめています。第二に、失望しているということです。それは今までの価値観では、先が見えない時代となったからです。これまで大丈夫と考えていた会社が大丈夫でなくなり、その失意は大きなものです。そしてどこに希望を託せばよいかを求めています。第三に、不安を抱えているということです。現代は、市場も雇用も流動的になり、先がどのようになるか不明です。これまでのものさしでは、皆目見当もつきません。これが多くのビジネスマンにとって不安材料となっています。

 問題は教会とクリスチャンが、この彼らのニーズをどれほど理解しているかです。

 月曜礼拝

 さて、私は大阪のビジネス街の中心地、北浜において、一九九六年以来ビジネスマンを対称とした集会、すなわちウイークデーの月曜日の夕方に礼拝を持っています。これは疲れを感じ、勇気を失い、不安を抱えるビジネスマンへの宣教と、多忙なクリスチャンビジネスマンに、神を礼拝する機会を与えるものです。

 この礼拝では、疲れた現代ビジネスマンに真の癒しを提供するため、良い音楽とみことばをプレゼンテーションしてきました。私のモットーは、最高の音楽と最高のみことばで神を礼拝することです。毎回、プロのクリスチャン音楽家を招く礼拝には、感謝なことに年間約一千名の来会者があります。まさに都会砂漠の中にある霊のオアシスです。

 一般のビジネスマンにとって、教会の敷居は高く入りにくいものです。そこで私は、会場として教会ではなく、レストランを借りています。

 月曜礼拝は、多くのビジネスマンたちに霊の癒しと力を提供してきました。疲れた企業戦士が礼拝を通して神の力に満たされ、生きる励ましと勇気を自分のものとする姿を見るとき、私の心は大きな喜びに包まれます。

 大阪の月曜礼拝は、ビジネスマン伝道の祝された働きのひとつです。それは時代の必要を満たすミニストリーではないでしょうか。(つづく)