霊的読書のススメ クリスチャンとしての読書

塩谷達也
ゴスペルシンガー

1970年生まれ。ゴスペルシンガー。
国際基督教大(ICU)教養学部卒。黒人文化を研究。
著作に『ゴスペルの本』(ヤマハミュージックメディア)。
自身が主宰するウェブサイト「Hush Harbor」http://www.hushharbor.net/はゴスペルに関する資料や情報源として信頼度が高い。
最新作CD「琴音(ことね)」
祈りをテーマにした「祈りうた」と日常をテーマとした「日々のうた」の2枚組。シンガーソングライターとして、ありのままの塩谷氏が感じられる。若者だけでなく、幅広い世代に受け入れられている。
 
 電車に乗ると、たくさんの人が本を読んでいるのを目にします。彼らは読書に何を求めているのでしょうか。

 ストレスを解消したい、ドキドキしたい、もっと仕事ができるようになりたい、趣味を深めたい、何となく……、思いは人それぞれでしょう。

 では、主にある信仰に立って生きている私たちは、本を読むことで何を受けることができるのでしょう。

 ここでは、私自身にとって読書がどういう意味を持っているのか考えてみたいと思います。

 私は本が大好きです。子どものころからたくさんの本を読んできましたが、クリスチャンとなってからの七年間、自然に、自分の読書の目的が変わってきたように思います。

 まず、私が一番求めることは、日々の信仰生活におけるこころからの励ましです。真実な主にある兄姉との交わりや、祈りによる励ましと同じように、読書においても日々生きていく力が増し加えられる経験をします。

人の人生に神がいる

 ゴスペルシンガー、マヘリア・ジャクソンの自伝(『マヘリア・ジャクソン自伝|ゴスペルの女王』、彩流社)を読み、彼女の弱さも強さもその人生のすべてが主にあって用いられていることを感じ、自分も主にあって恐れずに進めばいいんだ、と心からの励ましを受けました。伝記というものは、ひとりの人間の証しであり、計らずともその中に私たちは主のご計画を見るのです。

 また、名もない黒人奴隷の孫である、ひとりの老人の伝記「Life Is So Good」(邦題『一〇一歳、人生っていいもんだ。』、飛鳥新社/ジョージ・ドーソン著)。

 一九世紀末に生まれた彼は、アメリカ南部でまだ差別が激しいなか八歳で働き始め、九十八歳のときに高校の成人基礎教育講座で読み書きを習いはじめて全米の話題となりました。

 私が彼の人生に見たのは、人生を気楽に楽しもうというスタンスや、苦労して読み書きができるようになったというサクセスストーリーではなく、貧しくても、差別があっても、主が自分に与えられた人生をただよろこんで日々真実に生き、”Life is good, just the way it is.(人生っていいものだ)”と言える、素朴なまごころです。聖書のことばが直接書かれていなくても、そこには神が人に与えたもうた人生への感謝があふれ、何より励まされます。

 最近読んだ「Kira-Kira」(邦題『きらきら』、白水社/シンシア・カドハタ著)という小説で描かれている日系アメリカ人の家族からも、生きることへの忍耐、また、その背景にある神さまが与えてくれださったいのち、人生への敬意と感謝が感じられ、学ばされました。家族の愛というものは、頭では理解のできないほど尊い神さまからの贈りものだとあらためて思います。

いやしと和みと

 時にはただ黙って心を休ませ、いやしを受けたいときもあります。昔から”Peanuts”というスヌーピーで有名な漫画が好きで、ときどき読んでいました。犬と鳥と子どもしか出てこないこの四コマ漫画は、難解な神学書では開けることのできないこころのドアを開けてしまうことがあります。何でもない子どもたちの日常の行動やことばに、ただ笑い、ドキッとし、黙らされたあとで、不思議と心のなかにわだかまっていた疑問が抜けていくことがあるのです。

 敬虔なクリスチャンである作者のシュルツ氏はこう言っています。「漫画の中に何も意味を込めないのなら、むしろ何も描かないほうがましです。含みのないユーモアには、値打ちなどありません。」

 何度も同じ失敗をしてしまうチャーリー・ブラウンにはいつだってスヌーピーがいてくれるように、私たちにはいつも主がいてくださるのです。

 また、私は物ごころついたときから猫とともに暮らし、小さいときから苦しいときにはいつもそばに猫がいてくれました。そんな人間にとっては、素朴な猫の写真集などを見ているだけで、心が和みます。猫の写真に聖書の言葉が添えられているフォレスト・ブックスの『いっしょにいさせて』は待望の一冊。ほんとうに猫たちは神さまが私に与えてくださったエンジェルだと感謝しています。まあ、たいていの時は、ほとほと困らせられているのですが……。

試練の時には

 そして、主のお与えになった試練の暗闇で、みこころを探り、もがいているときに、祈りながらすがるように読む本があります。V・レイモンド・エドマン氏の『人生の訓練』(いのちのことば社)には、主が、愛するわれわれ子どもたちを訓練させるために与えたもう試練への助けがあふれています。

 私はこの本を、受洗後、教会からのプレゼントとして牧師からいただきました。受洗してからの数年は、この訓練の本当の意味がなかなかわからなかったように思います。しかし今は、多くの試練を与えられたことで、みことばのとおり、患難が忍耐を生み出し、忍耐が練られた品性を生み出し、練られた品性が希望を生み出す、ということに、感謝と共に目がひらかれてきました。今後の人生においても『人生の訓練』のページをひらき、祈るたびに、主がさらに自分を訓練なさろうとしていることを胸に刻みたいと思います。

 言うまでもなく、読書にかぎらず音楽、映画、そのほかのメディアからも、霊的な助けや励ましを受けることは可能です。世にあって、すべてそれぞれに与えられた賜物を生かし、互いに、主に従う歩みを確かなものにしていけますように。

マヘリアジャクソン自伝
ゴスペルの女王
中沢幸夫訳
彩流社 2,548円

101歳、人生っていいもんだ。
ジョージ・ドーソン/リチャード・グローブマン共書
忠平美幸訳
飛鳥新書 1,785円

きらきら
シンシア・カドハタ
代田亜香子
白水社 1,575円

スヌーピーたちの聖書のはなし
ロバート・L・ショート
講談社SOPHIA BOOKS 1,470円
笹野洋子訳

いっしょにいさせて
広路和夫 写真 
フォレストブックス 1,155円

人生の訓練
V・レイモンド・エドマン
海老原良雄 訳 
いのちのことば社 2,047円

CD 最新作
『琴音ことね』
「日々のうた」「祈りのうた」2枚組
 2,520円