見えない戦争 揺れる平和
この国は、本当に平和なのか ■マンガで世界の現状を見る!

廣島 尚
日本バプテスト連盟宣教部国外伝道室長、花小金井キリスト教会牧師

BOOK
Review

『旅をしながら』
四六判 192ページ 1,260円
みなみななみ 著

マンガというとっつきやすさと、内容のわかりよさによって、ルワンダやカンボジアで起こったこと、エチオピアのたいへんな食糧事情が自然と入ってくる。
エチオピアの村の長老が語った「私たちは物乞いではありません。……だから食べ物をくださいということを言いたくない。でもみなさんの技術や道具で助けてもらえませんか」(四一頁)ということばに、支援の考え方が問われる。また、子どもが二十歳になるまで生きてくれることが親たちの夢だという。そんな彼らとともに、「主の祈り」を祈るためにはどうしたらよいのか考えさせられる。
「人はなぜ こうも残酷になれるのだろうか」(一〇九頁)。大虐殺のあったカンボジアやルワンダを訪れるとだれもが抱く思いだ。だが「虐殺者のためにも十字架にかかられ その赦しのためにイエスさまは苦しみにあわれた」(一一〇頁)。その神の赦しの中で、「赦す? まさか? 自分の家族全員を殺した人を? 苦しくて 苦しくて」「でも神さまに祈り続け 赦す力をいただきました」(一五二頁)との告白がされる。
貧しさが争いの原因にもなるし、争いが貧しさの原因にもなる。ルワンダで働く佐々木さんはこう語る。
「社会の間違った構造によって多くの人が命を失ったり抑圧されたりしているのなら 戦争でなくてもそれは暴力」「暴力紛争の後 人と人との関係性の回復をすること そして貧困や不平等をなくしていくこと それが本当の平和を築くために大切」(一七〇、一頁)
世界の現状に目を留め、これまで知らなかったことを知り、祈り始めることは私たちにもできる。
「世界のどこかに困っている人がいても、今日の自分にはなんの影響もない。日々、自分の生活をやっていくだけで、なんだかいつも、せいいっぱい。遠くの知らない人のことまで、私にはなかなか考える余裕がない。『でもね、ちょっと見てごらん。』ある日、神さまは言ったみたいだ」「今の自分に、何もできなくても『見る』ことから始めてもいいかもしれない」(あとがきより)
若い人たちにぜひ読んでもらいたいおすすめの一冊である。