時代を見る目 254 希望ある明日に向かって [2] 「世界子どもの日」に思う

片山信彦
ワールド・ビジョン・ジャパン 事務局長

11月20日が「世界子どもの日」であることをご存じでしょうか。国連総会は1954年12月4日、すべての加盟国に対して「世界子どもの日」を制定することを勧告しました。具体的な日付は各国政府の判断にゆだねられましたが、国際連合で「児童の権利に関する宣言」(1959年)と「児童の権利に関する条約」(1989年)が採択された11月20日を「世界子どもの日」とするのが一般的です。一方、日本では「こどもの日」の5月5日をそれに当てています。
世界で最初に子どもの日を制定したのはトルコで、1920年に4月23日と定められました。国によって行事は異なりますが、学校が休みになったり、イベントや子どもにプレゼントを贈る習慣がある国もあるようです。どの国も子どもたちの成長を喜び、感謝するとともに、子どもたちの状況を理解し福祉の拡大のために定められました。
日本では最近子どもの貧困が問題になっています。シングルマザーの増加や雇用の悪化、収入の減少が原因とされていますが、悪影響が子どもたちを襲っていることは否めません。
では、世界の子どもたちの現状はどうでしょうか。
アジアの5歳未満の子ども3億5,000万人のうち4分の1は低体重で、1億人が発育不良です。バングラデシュでは未就学児の54%にあたる950万人以上が発育不良、インドには世界で最も多くの発育不良の子どもたち6,100万人がいます。
世界全体でみると、1日に17,000人の5歳未満の子どもが防げる病気で亡くなっています。また、5,700万人の子どもが学校に通えていません。児童労働を強いられている子どもは、年間1億6,795万人います。これらの状況に対して、2000年に国連で合意されたミレニアム開発目標では、2015年までに、すべての子どもが男女の区別なく初等教育を全課修了できるようにすることや、5歳未満児の死亡率を1990年と比べて3分の1に減少させることを目標に掲げ、各種の取り組みがなされてきました。その結果、かなりの成果が出ていますが、まだ完全には目標が達成されていません。
子どもたちの成長は未来の希望です。今の大人は昔の子どもであり、子ども時代をどう過ごすかで未来の社会が決まります。世界子どもの日に、世界の子どもたちに私たちができることを考えてはどうでしょうか。

* ワールド・ビジョンは、キリスト教精神に基づいて世界の子どもたちのために、開発援助、緊急人道支援、アドボカシー(市民社会や政府への働きかけ)を行う国際NGOです。