時代を見る目 247 生きづらさからの回復 [1] 今日一日という生き方

齊藤和夫
青十字サマリヤ会 館長

昨年、厚生労働省よりギャンブル依存症者(疑い含む)は536万人に達すると推計が発表されました。日本のパチスロ市場規模は18.9兆円(2011年)、スイスの国家予算(世界20位)と同じです。

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「アルコール・薬物・ギャンブルだけの孤独と、背負いきれない重荷の中にうずくまったままでいた私たちは、仲間たちとのミーティングの中で自分自身を内省し始めた。まもなく私達は、身体的にも感情的にもそして霊的においても病を得た病人であり、病気になったことの責任はないかもしれないが回復していく責任があることを学び始めた」(青十字サマリヤ館「回復のプログラム」第2章より)。
現実逃避の道具として依存物質の使用や依存行為を続けることによって、問題の先送りをした結果が生きづらくなったのか、それとももともと生きづらさを抱えて生きてきた孤独と苦しさからの現実逃避なのかは、それぞれの依存症へのプロセスの違いはあるとしても、依存症からの回復を歩んでいる方の素面の生きづらさは相当な重荷であることは理解できるのではないでしょうか。
回復とは治らない病の体で自分の重荷を背負い続け身体的、感情的、霊的に健康な状態を維持しながら、精神的に自立した生き方を目指すことです。しかし、その生き方は途方もなく過酷な遠い道のりに感じられ、すべてを投げ出したくなる衝動に駆られるときに、先行く仲間(同じ依存症の方で先に回復に向かっている仲間)から「あせらなくてもいいのだよ。今日一日回復に向かおう」と教えられることにより、気持ちを保ち、自分ひとりの力ではなく仲間の力が支えとなっていることに気づかされ、今日一日の回復の歩みが明日へと続きます。

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だれもが人間関係の壁に苛まれる経験があったと思いますし、まさに今、潰れそうになっている方もいることでしょう。人は生きづらさの中で自己中心的で、人をコントロールしたくなるものですが、今その自分の問題に気づかなければ「問題の先送り状態」であり、いつか、現実の問題として現れてきます。その問題から逃避するのではなく、自分の問題として認めることが回復の一歩です。