時代を見る目 130 世界に目を向けて(3) “何か”はきっとできる

片山信彦
特定非営利活動法人 ワールド・ビジョン・ジャパン 常務理事・事務局長

 世界の貧困を解決するために、国際協力の面で私たちにできることは何でしょうか? とよく聞かれます。できることはたくさんありますが、その前に基本的な姿勢や意識が重要であるように思います。まず、一人ひとりが、自分以外の人に対する思いやりの気持ちを持つこと、そして疑問を持つことです。

 なぜ日本はこんなに裕福になったのかと問うと、人々が勤勉に働いてきたからだという答えが多いと思います。そのとおりなのですが、日本の繁栄は他の国の自然環境を破壊し、ある場合には他国の人々の生活を犠牲にしたものだと厳しい指摘をする方もいます。

 現在、日本のエネルギー自給率は一〇パーセント以下、食料自給率もカロリーベースで四〇パーセントくらいと言われ、日本社会そして日本の人々は、国際社会に大きく依存していると言えます。

 日本は生存のために世界を必要とするけれど、もしかしたら世界は、必ずしも日本を必要としないかもしれません。このように考えてみると、国際協力は人道的に行うべきものと言うだけでなく、実は日本が国際社会に対して果たすべき当然の義務で、一種の地球市民税であると言っても過言ではありません。

 世界がますますグローバル化する現代、私たちが自分たちだけの繁栄や豊かさを求めることはできなくなっています。そこで求められるのは、他者と一緒に生きていくこと、それも世界の最も弱いと思える人々の喜びや痛みを感じ取り、その人々と「共に生きる」という視点を持つことではないでしょうか。

 それを実現するためには、私たち一人ひとりが普段から、日常生活の中で「共に生きる」という意思や力を持つことが大切で、その中で実際に自分のできる“何か”を見つけていくことだと思います。ワールド・ビジョンの創設者であるボブ・ピアス師は私たちに素晴らしいことばを贈ってくれました。

 “何もかも”はできなくても、“何か”はきっとできる。