家族が幸せになる幼稚園 狭山ひかり幼稚園を訪ねて (後半)

イエス様に結びつくため

 しかし、なんといっても、ここに入園させたいと強く思わせるその最大の魅力は、今年七十歳になる東喜代雄園長に集約される。

 園児のお母さんは「まったく偉ぶっていないのよ」と言う。確かに、「私が園長です」と紹介されなければ、仕事の合間に子どもたちと一緒に遊んでいる近所のおじいさん、と間違えてしまうかもしれない。

 「えんちょー」と園児たちも、親しみをもって声をかける。

 だが、一見、物腰柔らかそうに見える園長の信念は半端でなく堅い。

 今から三十四年前に、東園長は、今は亡き妻みねさんの実家のある狭山に熊本・人吉から引っ越してきた。その後、元市長で資産家の義父の支援のもと、狭山ひかり幼稚園を開園した。

 設立趣意は「園では聖書を教える」「福音を語る」「教員は全員クリスチャンとする」「教会との協力関係を大切にして、信仰の成長を図っていく」の四点。「幼児神学校」さながらである。

 そして東園長は言う。「私はどんなに幼稚園が人気があり、歴史や伝統、あるいは実績があっても、人々がイエス様に結び付かなければ、その仕事は徒労だと思います。クリスチャンの仕事は、『主なる神であるキリスト様に喜んでもらってなんぼ』のものだからです」。

 「子どものすること、言うことで、意味のないことはひとつもない」。いつでも子どもの視点に立つこと、これが東園長のモットーだ。しかし、当初は「よい子」を育てることを教育の目的としていたという。

 園の土地を与えてくれたお義父さんの期待に応えたいと思って幼稚園を経営していたからだ。 それは大人の目線だった。

 「『子どものため』って意外とむずかしい。むしろ、今があるのはたくさんの子どもたちに学ばせてもらってきたおかげですよ。『今までの子どもには、申し訳なかったなー』と思うことばかりです」

親が安心できる幼稚園

 午後二時。保護者が子どもを迎えに来る少し前に、パートタイマーとして働くひとりのお母さんに出会った。「いつも、少し早く迎えに来て、園庭で和むのが好きなんです」。

 十年前に初めての子を入園させ、あと一年で四人目も卒園する。「時々、東先生が忠告してくれるんです。『もっと、愛情をかけてあげないとね』と。先生は私よりも子どものことを見ているし、分かっているんです。お節介とは思わないですね。信頼しているから。あと少しでこの幼稚園から子どもも卒園します。寂しいですね」。

 お母さんが安心できる幼稚園。こんなふうに励ましてくれる幼稚園があるなら、親も子どものために一生懸命になれるのかもしれない。  (編集部)